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第23回 分譲マンション購入に関するADR相談事例

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(一社)日本不動産仲裁機構には、日々、消費者からADRを見据えたトラブル相談が寄せられています。今回は、マイホームとしての分譲マンション購入に関する相談事例を紹介します。


夢のライフスタイルが実現しなかった…

まずは、夫婦でバイクに乗るのが趣味のA夫婦からの相談です。夫婦それぞれでバイクを所有しているため、駐輪場を複数借りることを条件に物件を購入したのですが、住んだ後になって、管理規約上は1世帯につき1台分しか契約できないことが分かりました。A夫婦は今後一生このマンションに居住したいという気持ちがあり、揉め事は起こしたくなかったので、1台を売却することにしました。物件の仲介をした不動産会社にクレームを入れたところ、不動産会社から、駐輪場を複数借りることができるよう、管理規約の変更依頼を管理組合に提出することを提案され、A夫婦はこれを実行しましたが、否決されてしまいました。


A夫婦は、重要事項説明の段階でも宅建士を通してバイクを2台置けることを確認しており、加えて自分たちの趣味である夫婦でのツーリングも行けなくなってしまったため、不動産仲介会社に憤りを感じており、約500万円の解決金を請求しようと考えていました。


想定外の費用が必要になってしまった…

次に、大規模修繕を目前に控えた中古マンションを購入したB氏からの相談です。購入前に、不動産仲介会社から「大規模修繕のための個人負担は最大60万円」と言われていましたが、購入後、120万円ほどかかることが分かりました。B氏はこの件について、超過分を負担して欲しいと不動産仲介会社と売主に伝えましたが、どちらからも返答はありませんでした。B氏は、訴額の上限が60万円で簡易迅速に判決が出る少額訴訟を考えましたが、相手方の申述により訴訟に発展する恐れがあり、その場合、弁護士費用を考えると費用がかさんでしまうため、一度ADRによる話し合いでの解決を試みたいと考えていました。


施工ミスにより工期が遅れてしまった…

3つ目の事例は、新築マンションを契約していたC氏からの相談です。契約した後、施工ミスにより工期が1年程度遅れるとのことで、契約の合意解除を求められました。契約書の記載に手付金の倍返しで解除できる条項があり、それを行使するとのことでした。再契約時に同一価格での優先購入権も付与するとの内容であったため、C氏は合意解除に応じる意向はありましたが、工期(再契約の時期)が確定するまで解除には応じないとのスタンスでいたところ、再度の人為的ミスが発生し、更に工期が10か月程度遅れるとの連絡がありました。そして、販売者は、2回目の工期延長については補償等を一切考えていないということでした。これに対し、C氏は、マンションに入居するまでの家賃負担の増加等に対し、何かしらの迷惑料を販売側に請求したいと考えていました。


以上、分譲マンション購入に関するトラブル相談をみていくと、事業者のミスが原因となるトラブルも多いようです。消費者の皆さまは、事業者の言うことだからと全てをうのみにするのではなく、少しでも説明内容を不安に思ったり、疑問に思ったりした場合は、自分自身でも関係者に確認をするのが良いでしょう。

平柳 将人 このコラムの執筆者
平柳 将人(ヒラヤナギ マサト)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。

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