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第25回 耐震性を考えるなら新耐震基準の中古住宅購入(最終回)

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古住宅を購入する人が心配することの1つに建物の耐震性があります。地震国で家を買う以上、耐震性のことを考えないわけにもいかないですね。今回は、中古住宅を購入しようとする人が、耐震性について知っておくべきことや購入時にチェックしておくべきポイントをお話します。

1耐震性を考慮した中古住宅購入がオススメ

新築住宅を買う場合、現行の建築基準に適合した物件のはずですから、構造に関わる瑕疵・施工不良などがない限りは耐震性についても一定の安心感がありますが、中古住宅では建築当時の基準の緩さ(現行のものに比べての話)や建物の著しい劣化のために耐震性が劣る住宅が多いのも事実です。

耐震性が著しく低いことは、それだけ建物が倒壊や半壊するリスクが高いわけですから、購入時点でできる限り確認をしておきたいものです。

中古住宅を購入する人から、「古いし、新築より安いものを買うのだから仕方ない」といった諦めの意見を聞くことがありますが、物件によって耐震性は大きく違いますし、あきらめるのは早計です。購入後も安心して暮らしていくため、可能な範囲でチェックしておきましょう。

2新耐震基準の住宅が要チェック

中古住宅購入時の耐震性のチェックポイントとして挙げられる重要ポイントの1つは、その建物が新耐震基準で建てられているものかどうかという点です。新耐震基準の住宅なら、基準に満たないものよりも耐震性の点で安心できると聞いたことがある人は少ないでしょう。

2-1.新耐震基準とは?

住宅に限らず建物を建築する際は、建築基準法に則った建物を建築しなければなりませんが、この基準はこれまで何度も改正されてきております。数多くある改正のなかでも、住宅の耐震性に大きく関係する改正の1つが1981(昭和56)年6月1日以降に建築確認をしたものに適用されています。

この改正が適用されているかどうかが、新耐震基準かどうかです。

もちろん、新しい基準の方が耐震性の高いものになりますから、新耐震基準で建てられた住宅の方が好ましいわけです。よって、1981(昭和56)年6月1日以降に建築確認をした住宅であるかどうかを購入前に確認すればよいわけです。

ちなみに、建築確認とは建築する前に建築基準に適合していることを確認する制度のことです。

2-2.新耐震基準か確認する方法

それでは、買主がどのようにして新耐震基準の住宅であることを確認すればよいのでしょうか。不動産仲介業者から説明を受けられることも多いですが、きちんとその根拠を確認しておかないと誤った説明を受けていることもあるので注意しましょう。

現実的に確認しやすい方法は以下のいずれかの書類で確認する方法です。

(1)建築確認申請書
(2)確認済証
(3)検査済証
(4)確認台帳記載事項証明

このうち、(1)建築確認申請書、(2)確認済証、(3)検査済証の3点は売主から提示してもらうことになりますが、売主が紛失してしまっていることが多く、これらを入手できないケースは非常に多いです。そこで、これらの代わりに確認のために用いられるのが、(4)確認台帳記載事項証明です。

確認台帳記載事項証明は、役所で申請すれば入手できることが多いものです。不動産仲介業者にお願いするなどして入手して頂くとよいでしょう。用意のよい不動産会社なら先に準備していることもあります。

これらの書類を入手して、記載内容を確認すれば、建築確認を受けた時期がわかるので、これで新耐震基準の住宅であるかどうか確認してください。

ただ、この書類を入手して確認する段階は物件を見学して購入しようと前向きになった段階で行うことが一般的です。まだ見学もしていない段階で書類を要求しても売主や不動産会社が提示しないことは多いです。そこで、物件見学前に簡易チェックする方法を紹介します。それは、建物の完成時期をチェックする方法です。

中古住宅の広告には、必ず築年数が表記されています。小さな文字で書かれていることも多いですが、物件概要を見れば「築●年」といった記載が必ず見つかるはずです。もしくは、「昭和●年●月築」と完成時期が記載されていることもあります。

築年数がわかれば、完成時期を簡単に計算できますよね。この完成時期から建築確認の時期が1981(昭和56)年6月1日以降かどうか予想するのです(あくまで予想であって確定できない)。

建築確認は着工する前にしていますから、建築確認日と完成日にはずれがあります。住宅によって工期は相違しますが、一般的な住宅であれば3~9カ月程度で多いです(昔は今の住宅より工期が長い。規模が大きい場合は1年を超えることも)。また、建築確認のあとすぐに着工するとも限らないです。

このことから、目安としては完成時期が1982年(昭和57年)6月以降に完成した一戸建て住宅ならば、新耐震基準の住宅である可能性が高いと言えます。但し、マンションの場合はもっと工期が長いことが多いため、1983年(昭和58年)を目安として考えるとよいでしょう。

いずれにしても購入する段階においては、書類で最終確認することを覚えておいてください。

2-3.建築確認をした通りに建てていないこともある

実は建築確認を受けたプランの通りに住宅を建築していないことがあることを知っておきましょう。最近の新築住宅においては、建築確認を受けた後にプランが異なるものを建築する事例はほぼないですが、昔はそういう事例がよくありました。

建築確認したプランと完成したプランで全然面積が異なるとか、壁の位置が異なるといった住宅もあったので、そういう住宅に関しては本当に新耐震基準の住宅であるとは言えないです。それどころか、構造の安全性を確認していない可能性もあります。

つまり、「2-2.新耐震基準か確認する方法」であげた書類の確認は完璧なものではないということです。あくまでも書類上の確認であって現存する建物の耐震性を担保するとは言えないことを知っておきましょう。

2-4.構造リフォームで耐震性能が変更になっていることもある

購入しようとする中古住宅の所有者が、売却するまでの間に(あなたが買おうとするまでの間に)リフォームしていたということはよくあることです。リフォームにもいろいろありますが、構造耐力に関わる部分についてリフォームしていた場合には注意が必要です。

例えば、間取り変更する際に既存の壁を解体撤去したり、柱の位置を変更したりしている場合は、構造部分の変更に当たる可能性が高く、当初のプランの耐震性から変わっていることが考えられます。

3中古住宅購入なら耐震診断

書類で新耐震基準の住宅であることを確認したとしても、現存する建物の実際の耐震性がどうなのか確認する作業は別物です。ここでは耐震診断について紹介します。

3-1.耐震性の確認のためには耐震診断

新耐震基準の住宅であっても、実際の建物の耐震性を確認するには耐震診断を行うことが有効です。建物のプランを設計図と現地調査によって確認し、建物劣化状況まで考慮したうえで耐震性を求める作業が耐震診断です。

中古住宅を購入する前に耐震診断を実行するためのポイントは以下の2つです。

・現地調査で床下や小屋裏まで確認すること
・耐力壁を確認できる図面があること

耐震診断の精度を上げるためには、できれば床下や小屋裏の内部まで調査してもらって、その調査によって得られた情報も耐震診断に反映してもらうべきです。

問題は耐力壁を確認できる図面があるかどうかです。売主がこの図面を保管していないことが多いですが、その場合には耐震診断の実行が困難になります。壁などの一部を部分的に解体するなどの方法で耐震診断することもできなくはないですが、工事を伴う耐震診断を購入前に実施するのは現実的に難しいです。

耐力壁を確認できる図面があるならば、耐震診断を前向きに考えるとよいでしょう。ちなみに、耐力壁とは筋交いや耐力上有効な合板などを使用した壁のことで、その情報が図面に書かれているかどうかがポイントです。

3-2.住宅ローン控除というメリットもある

耐震診断は耐震性を確認するという本来の目的以外にも、築20年超の木造住宅を購入した際に住宅ローン控除を受けられるというメリットもあります。20年超の木造住宅では、耐震基準に適合していることを証する適合証明書があることでローン控除を受けられるのです。

但し、築20年以下の木造住宅ならば、この証明書がなくてもローン控除の対象となります。

今回の記事で書いていることは、中古住宅を購入するうえで耐震性に関して知っておきたい知識です。購入を進めるなかで、この内容を理解していない営業マンと接する可能性も高いですが、少しでも安心感を高めるためにめげずに進めてください。

荒井 康矩 このコラムの執筆者
荒井 康矩(アライ ヤスノリ)
2003年より住宅検査・診断(ホームインスペクション)、内覧会同行、住宅購入相談サービスを大阪で開始し、その後に全国展開。(株)アネストブレーントラストの代表者。

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