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第13回 建売住宅の購入申込と申込時の注意点

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ろいろな物件を見学した後に具体的に購入したい物件が見つかれば、買主から売主に対して購入申し込みを行います。単に申し込みするだけで深く考えていない人も多いですが、申し込み前後の進め方が適切でなかったために不動産会社や売主との間でトラブルになっている事例もありますから、基礎知識を付けておきましょう。

ここでは新築の建売住宅を購入するときの購入申込について述べておりますが、中古住宅の購入の際にも概ね同じことが言えますから、中古住宅を買う人も参考にしてください。

1購入申し込みの基礎知識

建売住宅などの不動産を購入するときの申し込みについて、基礎的な知識を紹介します。

1-1.購入の申し込みとは

購入の申し込みとは、買主から売主に対して行う購入の意思表示です。「この物件を購入したい」という意思を明確に示すものです。

よく申し込みと売買契約を混同している人がいますが、この2つが全く異なるものであることをしっかり理解しておきましょう。様々な住宅購入相談にのっているなかで、こちらから「契約前ですか?」と質問したときに、「何かの書面にサインさせられたので契約しているのだと思う」と回答する人が少なくありません。

その書面が売買契約書なのか、この次に説明する購入申込書なのか区別がついていないことがあるので、書面はよく確認し、その内容も理解するようにしてください。

1-2.購入申込書

購入の申し込みをする際は、「購入申込書」に署名・押印して売主へ提出します。この書面の名称は、単に「申込書」となっていることもあれば「買付証明書」などとなっていることもあります。不動産会社が用意している書面なのですが、会社によって書面の名称が異なっており業界で統一されているわけではありません。

この申込書には、対象物件の情報、購入希望価格、売買契約の希望日、引渡し希望日、住宅ローンの借り入れ予定などを記述します。

購入申込書の提出は法的に必須とされているわけではありませんので、口頭で申し込みを行って、売主と買主の間で条件に合意すれば、売買契約へと取引を進めていくこともあります。

1-3.申込金(申込証拠金)

購入申し込みに際しては、買主から売主へ申込金を支払うことが多いです。これも必ずしも支払うとは限らず、申込金なしで購入申込書のみを売主へ提出するだけでよいということもあります。

申込金も不動産会社によって呼称が異なり、「申込証拠金」や「買付証拠金」などと呼ばれていることもあります。大事なことは、売買契約時に支払う手付金とは異なるものだということです。

2建売住宅の購入申し込みをする際の注意点と予備知識

不動産の購入申し込みについて基礎知識を習得できれば、次に注意点を見ておきましょう。意外と多い申し込みに関するトラブルを避けるためにも理解しておきたいものです。

2-1.購入申し込みは売主との交渉開始

購入申し込みを行うときには、購入申込書に購入希望価格を記述して売主へ提出することは既に述べた通りです。このときに記述する価格は、買主がその物件を買いたいと考えている金額であって、販売価格と同額を記述しなくてもよいことを知っておきましょう。

例えば、販売価格4,500万円である建売住宅を購入しようと考えている買主が、値引きしてもらって4,200万円で買いたいと考えているならば、この4,200万円を購入希望価格の欄に記述するわけです。

この購入申し込みの段階から売主との価格交渉が始まるわけですから、最初に購入希望価格として提示する金額をいくらにするかは慎重に検討すべきでしょう。買主が希望として提示した金額よりも高い金額で売主が妥協案を提示することも多いですから、買主としては実際の希望価格よりも少し低い金額で申し込みしておくことを考えてもよいでしょう。

但し、その物件を他の人が先に購入する可能性もありますから、購入希望価格をいくらにするかは総合的に、かつ慎重に検討すべきものなのです。

未完成の建売住宅に対して、販売価格より低すぎる金額を購入希望価格として提示すると売主から相手にされないこともありますので、注意しましょう。

2-2.申込金が高額ならおかしいと思うべき

購入申し込みの際に支払う申込金について注意すべきことは、その金額です。申込金として不動産会社から求められる金額としては、10万円程度の金額であることが多いです。5万円ということもありますし、取引によっては申込金が無い、つまり0円ということもあります。

例えば、販売価格4,500万円である建売住宅を購入しようと考えている買主が、値引きしてもらって4,200万円で買いたいと考えているならば、この4,200万円を購入希望価格の欄に記述するわけです。

一方で申込金としては高額な金銭を求められているケースもありますので、注意してください。これまでに見てきた高すぎる申込金の事例としては、30万円や50万円といった金額です。

一般的な取引で求められる金額よりも極端に高い金額を求められる場合、信頼できない不動産会社である可能性が高いため、十分に警戒した方がよいでしょう。信頼できない不動産会社である場合、以降で述べる購入申し込みのキャンセルや返金に関してトラブルになることが少なくありません。

2-3.購入申し込みはキャンセル可能

購入申し込みは売買契約ではありません。このことも既に述べた通りです。何かを売買するときには、売主と買主が口頭で「買う」「売る」の意思表示をすることで契約が成立するとされていますが、不動産の売買においては売買契約書で行う必要があります(宅地建物取引業法による)。

売買契約の前に行われた購入申し込みだけでは契約は成立しないため、申し込み後にキャンセルすることは可能です。そして、このキャンセルは買主からするときに関わらず、売主からも可能であることも理解しておきましょう。

2-4.キャンセルしたら申込金は返金される

「2-3.購入申し込みはキャンセル可能」において、購入申し込みは売買契約ではないため、キャンセル可能だと述べました。実際には、キャンセル(=解約)は売買契約をした後でも可能です。売買契約前のキャンセルと売買契約後のキャンセルの違いは、金銭負担にあります。

売買契約前に購入申し込みをキャンセルしたのであれば、支払済みである申込金は全額返金してもらえます。これに対して、売買契約後のキャンセルは売買契約を解除するということであり、そのときの状況に応じて契約によって取り決めた金銭負担が生じます。詳しくは別の機会に説明します。

注意すべき点は、返金してもらえるはずの申込金を返金できない金銭だと買主に対して虚偽の説明をする不動産会社があるという点です。

なかには、買主がそうやってだまし取った金銭を会社と営業マンで折半しているような悪質な業者もありますから注意してください。

そのような悪質な不動産会社に遭遇した場合は、その会社が所属する不動産業界団体に相談するか、自治体の相談窓口で相談することで解決することが多いです。

2-5.住宅診断(ホームインスペクション)は申込前か後か

購入申し込み時の予備知識として知っておきたいことは、住宅診断(ホームインスペクション)を利用するタイミングです。売買契約の前に利用することが推奨されるものですが、購入申し込みの前か後かで迷う人は多いです。

購入申し込みには、購入の優先順位を抑えるという意味もありますから、購入申し込み後・売買契約前のタイミングで住宅診断(ホームインスペクション)を依頼することが買主の都合に合っています。これにより、診断している間に他の人に購入されるリスクを抑制することができるからです。

しかし、売主の立場で見れば、その診断結果次第では購入を中止するかもしれないわけですから、購入申し込み前に診断してほしいと言われることもあります。これは概ね正当な理由とも言えますので、売主や仲介業者と相談してどちらのタイミングで実施するのか調整しましょう。

いずれにしても、売買契約前の診断は、依頼~住宅診断~購入判断のスピードも大事になりますから、住宅診断会社への見積り依頼などは早めにしておいた方がよいでしょう。

今回のコラムのなかでも特に大事なことは、以下です。

購入申し込みのときから価格交渉が始まっている
申込金が高額なら怪しむべきである
購入申し込みはキャンセル可能で申込金は返金される

契約前の大事な段階ですから、気をつけて取引を進めてください。

荒井 康矩 このコラムの執筆者
荒井 康矩(アライ ヤスノリ)
2003年より住宅検査・診断(ホームインスペクション)、内覧会同行、住宅購入相談サービスを大阪で開始し、その後に全国展開。(株)アネストブレーントラストの代表者。

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