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第9回 住宅の相続に関する問題

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回のテーマは、住宅の相続に関する問題です。人が亡くなれば相続が開始し、亡くなった人(被相続人)が持っていた財産が遺産となります。そのため、相続が生じると、住宅に限らず様々な財産が相続の対象となりますが、今回は特に住宅の相続に関して留意すべき点を取り上げます。

1住宅を誰が相続する?

被相続人が持っていた住宅を誰が相続するかは、大きく分けて、①被相続人の遺言によって決まる場合、②全ての相続人の協議(遺産分割協議)によって決める場合、③相続人が法律で決まっている割合(法定相続分)に従って相続する場合があります。


1筆の土地や1棟の建物を複数の人で持ち合うことも可能とされており、その場合にそれぞれの人の所有する割合は、「持ち分」として表されます。例えば、相続人が3人いて、それぞれの相続人の相続割合が等しい場合、法定相続分どおりに住宅を相続すると、それぞれの相続人が3分の1ずつの持ち分を取得することになります。


2住宅に関する遺言で注意するべき点

住宅を誰が相続するかは家族の中では大きい問題ですから、後で問題が生じないように予め遺言で定めておくことも多いと思いますが、特に自分で遺言書を作成する場合(自筆証書遺言)、その記載には注意が必要です。


前回のコラムで、土地にはそれぞれの筆ごとに地番という公的な番号が振られていることを説明しました。また、これと似たように、建物には家屋番号という公的な番号が振られていて、不動産は地番や家屋番号によって特定されます。ただ、これらの地番や家屋番号は日常生活ではあまり使用される場面はなく、普段馴染みのあるのは住居表示(いわゆる「住所」)の方かと思います。


そこで、遺言書の中で土地や建物を住居表示に基づいて記載してしまうと、土地や建物が正しく特定されず、登記手続が行えない等の支障が生じる場合があります。


地番や家屋番号は、登記簿を見ればすぐに分かりますが、それ以外にも、課税証明書等の固定資産税に関する書類にも記載がありますので、こうした書類を見て地番、家屋番号を記載し、正確に特定することが重要です。

3複数の相続人による相続の方法

相続人が1人しかいない場合や、遺言書で特定の相続人が指定されている場合などは、不動産を単独で相続することになります。一方、相続人が複数いて、遺言による相続人の指定もない場合、複数の相続人で不動産を分ける必要が生じる場面があります。その場合の分け方は、全ての相続人による遺産分割協議で決めることになります。


住宅の他に十分な遺産がある場合

この場合、不動産を特定の相続人が相続し、他の相続人は預金や株式等の他の財産を受け取る、といった方法で分けることが可能です。もちろん、こうしたケースでも、不動産を複数人で相続して共有することができないわけではありませんが、後で述べるように、不動産の共有には問題があることが指摘されています。


住宅の他に十分な遺産がない場合

話を分かりやすくするため、遺産が住宅(1筆の土地とその上に建つ1棟の建物)のみで、法定相続分が同じ3人の相続人がいて、遺言が存在しないケースを想定します。


このような場合、住宅を1人が相続してしまうと他の相続人が法定相続分(3分の1)の財産を取得できなくなってしまうため、住宅を3人で分ける手続が必要となります。それには次のような方法が考えられます。


〇現物分割

遺産である不動産をそのままの形で分ける方法です。相続人が2人であれば、1人が土地、もう1人が建物といった分け方も考えられなくはありませんが、今回のように3人のケースでは、それぞれが土地と建物の3分の1の持ち分を取得して共有することになるでしょう。


しかし、このように共有関係が生じると、後に売却を考えた際、共有者間で話がまとまらない限り売却できないことになります。なお、自分の持ち分のみを売却することは、理論上は可能ですが、不動産の一部の持ち分を買おうとする人は他の共有者を除いて考えられず、現実的ではありません。


共有者間で話がまとまらず売却ができないうちに、共有者の誰かが亡くなって次の相続が生じると、さらに共有者が増えてより一層話がまとまらなくなる、といった事態も生じかねません。そうなると、その不動産は売ることができない事実上無価値なものとなってしまいます。


そのため、共有関係を生じさせる現物分割は、一般的には優れた方法とは言い難いでしょう。


〇代償分割

これは、不動産の現物を特定の相続人が取得し、その代わり(代償)として、不動産を取得しなかった相続人に対して相続分に相当する金銭(代償金)を支払う方法です。この方法によれば、不動産を手放すことなく分けることが可能となります。


もっとも、不動産を取得する相続人が代償金を準備できないと取り得ない方法ということになります。今回のケースでは、不動産を取得しない2人に対し、それぞれ不動産価格の3分の1に相当する金額を支払うことになるので、不動産の価格によりますが、かなりの資金が必要になります。


〇換価分割

これは、遺産をお金に換えて、お金を分ける方法です。お金の形になれば、相続人が何人いても、またそれぞれの相続分が異なっても容易に分けることができます。


一方、売却時の不動産市況などにより高値での売却が見込めない場合(相続税の申告期限が迫っているなど、売却を急ぐ必要がある場合、買主に足元を見られてしまうケースもあります)、先祖代々受け継がれた土地である等の理由で第三者に手放すことへの抵抗がある場合などには、一部の相続人が反対してこの方法をとれない場合もあります。


もっとも、相続問題が解決されずに裁判紛争となった場合、最終的には競売の形で売られてしまうことになり、その場合の売却額は時価よりかなり低くなると言われているため、売らざるを得ないのであれば、相続人が協力してできるだけ高値で売ることを模索した方が賢明と言えます。


4相続と登記

第6回のコラムで、不動産の権利関係が変動した場合には登記手続を行うことが重要であることを説明しましたが、相続によっても、不動産の所有者が変わり権利関係が変動しますので、相続を原因とする所有権の移転登記の手続を行うことが重要です。登記手続を行わないままにしていて、仮に他の人が先に登記手続をしてしまった場合、その人に権利を取得されてしまうことになりかねません。


また、最近では、所有者不明の不動産が多数存在する問題が新聞などでも取り上げられるようになっていますが、相続が生じた際に登記名義を亡くなった人の名義のままにしておいたことがこうした問題の原因と考えられており、長期間放置していると社会問題をも生じさせるおそれがあるのです。


登記手続に必要な書類は、遺言書や遺産分割協議書の有無や相続人の構成等によって変わってきますので、詳しくは法務局の案内を受けるか、司法書士等の専門家に相談すると良いでしょう。


ポイント
遺言で不動産を特定する場合、住居表示ではなく、地番や家屋番号で特定する。
遺産に不動産がある場合の分け方には、現物分割、代償分割、換価分割がある。
不動産を複数の相続人が相続すると、共有関係が生じて、後に売却する際等に支障が生じる場合がある。
住宅を相続した場合には、すぐに相続を原因とした所有権移転登記を行うことが重要であり、登記手続を行わないと、他の人に権利を取得されてしまう場合もある。

次回のテーマは、近隣紛争に関する問題です。


このコラムの執筆者
原田 真(ハラダ マコト)
一橋大学経済学部卒。株式会社村田製作所企画部等で実務経験を積み、一橋大学法科大学院、東京丸の内法律事務所を経て、2015年にアクセス総合法律事務所を開所。 第二東京弁護士会所属。東京三弁護士会多摩支部子どもの権利に関する委員会副委員長、同高齢者・障害者の権利に関する委員会副委員長ほか

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