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第5回 調査報告書の作成のポイント

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判では、欠陥(瑕疵)を立証するため、専門家の調査報告書を提出します。これは最初から最後まで主張立証の中心となるとても重要な証拠です。今回はこの調査報告書の作成のポイントをご説明します。

裁判に出廷してくれる専門家を探そう

冗談のように聞こえるかもしれませんが真面目な話です。調査報告書の内容が争点となれば、作成者に証人として出廷をお願いする場合があります。そこで、まずは裁判に出廷してくれる専門家を探すことが第一歩です。

建築の専門家が工事の欠陥を指摘するということは、同じ業界で働く業者の仕事内容を批判するということです。相手が大手ゼネコンや建築確認検査機関などの場合もあり、自身の本業に支障が出るかもしれません。そのような厳しい立場で裁判に出廷し、被害者のために意見を述べてくれる専門家というのはそれほど多くありません。ほとんどの方は関わりを避けるのが実情です。

過去の事例では、氏名を伏せることを条件に調査報告書の作成に応じると話した専門家がいましたが、作成者不明の調査報告書では裁判所に信用されません。

費用を支払って調査報告書を作成してもらったけれど、証人尋問の手続に入る段階で急に連絡が取れなくなった専門家の話を伺ったこともあります。

裁判などの証拠として利用するために調査報告書を作成するわけですから、裁判の出廷にも応じてくれることが最低条件となります。

写真等の見せ方を工夫しよう

さあ、いよいよ調査報告書の中身の話をしましょう。まだ現場を見ていない裁判所に欠陥(瑕疵)の内容を理解してもらうには工夫が必要です。どうすれば分かりやすくなるのでしょうか。逆に分かりにくい調査報告書の例を挙げれば理解しやすいと思います。

欠陥(瑕疵)の主張立証は、「法令や契約などの基準」に照らして「建物の現状」が違反していることを明らかにすることだと学びましたね。「建物の現状」は、図面や写真などを用いて説明します。そこで有りがちな失敗は、瑕疵を目立たせたい意識が強すぎて、接写した写真を多用することです。そして、写真を撮影した当人は、どこで何を撮影したのか当然理解していますので、その分説明が不足しがちになります。

しかし、まだ現場を見ていない裁判所からすれば、接写した写真を見せられて、これが瑕疵であると説明されても何がなんだか分かりません。ストレスの塊です。

そして、裁判所から、まず写真の説明を求められ、次に場所の説明を求められ、説明しても分からないので、もっと分かりやすい写真の提出を求められ、写真を撮影した位置や方向を示す報告書の提出を求められるという流れになります。このような確認作業だけで裁判が数か月停滞することも珍しくありません。欠陥住宅の裁判が長期化する一因は、案外このようなところにあるのかもしれません。

そこで工夫すべき点としては、接写した写真を撮影する場合、部屋全体の状況が分かる引いた写真も必ず撮影しましょう。

写真に番号を振り、その番号を平面図に落とし込み、さらに撮影した方向を矢印で示した写真撮影位置図を添付して、どこで何を撮影した写真であるのか一目瞭然に分かるようにしましょう。

1ページに複数枚の写真を載せてもよいですが、見せたい部分が小さくて見えにくい場合には、その写真だけ大きく拡大しましょう。1ページ丸ごと使っても構いません。体裁よりも分かりやすさを優先させましょう。

見えにくい被写体には、マスキングテープなどの目印となる道具を利用しましょう。幅や大きさが問題となりそうな被写体には、予めスケールを当てて撮影しましょう。このように工夫するだけで、分かりやすい「建物の現状」の説明となるはずです。

しっかり根拠を示そう

次に、根拠となる「法令や契約などの基準」の示し方です。私は一番重要な部分だと考えていますが、意外にもここが手薄な調査報告書が多い印象です。なぜでしょうか。

例えば、専門家にとって常識的な事項は、どうしても説明が不足しがちになります。しかし、専門技術的な常識は、一般常識とは別物です。裁判所は、一般常識であれば判断できますが、専門技術的な常識は根拠がなければ判断できません。その根拠を示すために調査報告書を作成するわけですから、専門家にとって常識的な事項でも根拠を示していただきましょう。

また、根拠を探しても見当たらないことがあります。過去の例では、業者がホールダウン金物を折り曲げて施工したため、折り曲げて施工してはならない根拠を探してもらったところ、そもそもこのような施工は想定されていないので、的確な根拠が見当たらないということがありました。困ったことに、常識を超えた杜撰な施工が行われた場合には、的確な根拠が見当たらない場合があり得るのです。結局、協力建築士がメーカーに問い合わせて、メーカーから聴取した内容を報告する形で調査報告書を作成していただきました。

色々と事情はありますが、欠陥(瑕疵)を立証するには基準となる根拠を示すことが不可欠です。様々な知恵を絞って探していただきましょう。

設計図、建築基準法施行令、告示、建築工事標準仕様書、メーカーのマニュアルなどは、本文で引用するだけでなく、該当箇所を添付資料として付けましょう。

依頼する弁護士に添削してもらおう

悪気があって言うわけではありませんが、専門家が作る調査報告書は、ときに文章表現が分かりにくいことがあります。

これは無理もないことで、例えば、建築士という国家資格は、文章表現の能力が試されるわけではありません。また、本業は建物の設計や工事監理を行うもので、それによって文章の表現力が磨かれるわけではありません。理系出身者ということで、どちらかというと文章表現が苦手な方も多いのではないでしょうか。ですから、とても優秀な建築士でも文章表現が優れているわけではないのです。

これは中身の問題ではなく、単に表現の問題に過ぎませんので、依頼する弁護士に表現部分だけ添削してもらいましょう。

次回は損害論です。補修見積書の作成のポイントや請求できる損害項目などをお伝えします。

髙木 秀治 このコラムの執筆者
髙木 秀治(タカギ シュウジ)
欠陥住宅全国ネットに所属。2014年に欠陥住宅関東ネットの事務局長に就任、同ネットで弁護士と建築士による定例相談会を毎月開催。2018年に第二東京弁護士会の住宅紛争審査会の紛争処理委員に就任。プラス法律事務所のパートナー。

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