広告を掲載

第4回 権利の期間制限

  • facebook
  • twitter
  • hatena
  • LINE

重大な欠陥(瑕疵)に気が付きにくい欠陥住宅特有の事情

これまで欠陥住宅の相談を受けて思うことは、時間が経ちすぎていて、救いたくても救えない被害者が多いということです。被害者を救済するにはその権利を行使する必要があるのですが、他方、法律や契約によって権利の期間制限が定められていて、欠陥住宅の被害者の権利がこの期間制限にかかってしまうことが多いのです。なぜでしょうか。

理由の1つは、欠陥(瑕疵)が建物内部や地中などの気が付きにくい場所にあることが多いからです。

例えば、軟弱地盤により建物が傾いた場合、通常、長い年月をかけて徐々に傾きが進行しますので、日々そこで生活している居住者は意外と気が付かないものです。過去に報道された横浜の傾斜マンションの杭データ偽装事件でも、建物が完成したのは平成19年冬ころですが、居住者の指摘により調査が開始されて杭の不具合が発覚したのは平成27年10月です。あれほど重大な問題として取り上げられたにもかかわらず、建物完成から発覚までに約8年も経過しているのです。

雨漏りも、たくさん漏る場合は分かりやすいですが、少しずつ漏って内装の裏側の部材が腐り、内装材の表面まで染み出てくるのに時間がかかる場合もあります。

もう1つの理由は、重大な欠陥(瑕疵)は業者が誤魔化すことが多いからです。

欠陥現象を発見した場合、まずは業者にその対応を依頼することが多いでしょう。ところが、「『欠陥(瑕疵)』の考え方前編」でもご説明したように、同じ欠陥現象でも、欠陥原因は複数考えられることが多いのです。

誠実な業者であれば、その原因を徹底調査して補修してくれることもあるでしょう。しかし、見えない場所の欠陥原因の特定となると、破壊調査や特殊な機器を使用した調査が必要となり、調査を行うだけでもある程度の費用がかかる場合があります。

そうなると、重大な欠陥が疑われる場合でも、費用がかかる調査は行わず、目視による外観調査だけで済ませて、仕上げの問題として表面的な補修で誤魔化されることがあるのです。

例えば、軟弱地盤により建物が傾いた場合でも、床板の貼り方が悪かったとして、床板や根太のレベル調整だけで済まされるということがあります。一部報道によれば、先の傾斜マンションの杭データ偽装事件では、当初、販売会社側は「東日本大震災の影響だと思われる」と説明していたようです。一流企業であっても被害対応が一流とは限りません。

雨漏りの場合でも、場当たり的な補修を繰り返して仕上部分だけを綺麗に復旧しても、雨水の浸入経路を特定できなければ、再び雨漏りが発生することになります。過去の事例では、表面的な補修を繰り返して10年間雨漏りが止まらず、こちらで破壊調査を行って雨水の浸入経路を特定したことがありました。

いつまでに何をすればいいのか?(2020年民法改正前)

欠陥住宅裁判で業者の責任を追及する手段は、一般的には瑕疵担保責任と不法行為責任の2つの法律構成が考えられます。瑕疵担保責任は無過失責任であり、業者に過失がなくても認められる責任です。他方、不法行為責任は過失責任であり、業者の過失を必要とします。そのため、瑕疵担保責任の方が不法行為責任よりも請求が認められやすいと言えます。

ところが、通常、不法行為責任は建物の引渡しから20年の経過で請求できなくなるのに対し、瑕疵担保責任は建物の引渡しから長くても10年で消滅時効が完成してしまいます。さらに、瑕疵担保責任は、消滅時効とは別に、法律によって権利行使の期間制限も設定され、この期間制限が契約によってさらに短く設定されることが多く、個人間の中古建物の売買契約ではわずか数か月ということもあります。

したがって、瑕疵担保責任は建物の引渡しから長くても10年が1つのメルクマールとなり、被害者側の代理人弁護士としては、どんなに遅くともそれまでには訴訟を提起したいと考えます。

また、建物の引渡しから20年が経過してしまうと、瑕疵担保責任だけでなく不法行為責任の追及も難しくなるので、救済手段がなくなってしまいます。

このように、権利の期間制限の問題はとてもシビアです。また、期間制限の内容は、売買契約と請負契約で異なり、消滅時効と除斥期間で異なり、契約や民法だけでなく特別法にも定めがあるなど、とても複雑です。建築士では適切な対応ができない法律問題ですので、できる限り早いタイミングで弁護士に相談することをお勧めします。

民法改正による影響

民法(債権法)の改正があり、この改正は2020年4月1日から施行されます。この改正では、権利の期間制限に関して現行民法から大きな変更があります。

まず、債権の一般的な消滅時効期間について、権利を行使することができる時から10年間行使しないときに消滅時効が完成しますが、さらに、権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときでも消滅時効が完成するようになります(改正民法第166条第1項)。したがって、欠陥を知った時から5年以内に訴訟を提起できるように準備しておく必要があります。

次に、「瑕疵」が「契約内容不適合」という概念になり、その不適合を知った時から1年以内にその旨を相手方に通知しなければ、原則として担保責任を追及できなくなります(改正民法第566条、同法第637条第1項)。

上記変更にかかる改正民法は、施行日の2020年4月1日以後の契約に適用され、それより前の契約には現行民法が適用されます(改正民法附則第10条第1項及び第4項、同第34条第1項)。

次回からはさらに実践的な話に移ります。まずは裁判所に提出する専門家の調査報告書について、その作成のポイントをご説明します。

髙木 秀治 このコラムの執筆者
髙木 秀治(タカギ シュウジ)
欠陥住宅全国ネットに所属。2014年に欠陥住宅関東ネットの事務局長に就任、同ネットで弁護士と建築士による定例相談会を毎月開催。2018年に第二東京弁護士会の住宅紛争審査会の紛争処理委員に就任。プラス法律事務所のパートナー。

関連記事

コラムバックナンバー