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第3回 「欠陥(瑕疵)」の考え方 後編

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契約違反か法令違反か

被害者は何を根拠に「欠陥(瑕疵)」があると主張すべきでしょうか。契約違反でしょうか、法令違反でしょうか。

民事裁判では、請負契約でも売買契約でも、当事者が契約した内容に違反していることが「欠陥(瑕疵)」として扱われます。つまり、契約書やそれに添付されている図面、仕様書、見積書などから、当事者間の契約内容を特定し、現状の建物がその契約内容に違反していることをもって「欠陥(瑕疵)」があると主張します。ただし、軽微な契約違反は「欠陥(瑕疵)」と評価されないことがあります。

私が過去に扱った裁判例では、リフォーム工事において、壁の位置が契約図面と異なることが「欠陥(瑕疵)」と判断され、壁の位置を契約図面どおりに変更するための工事費用の賠償が認められました。この事案は、食器棚を壁の中にすっぽり埋め込むために、キッチンの壁の位置を後退させる工事を約定していたにもかかわらず、なぜか業者が手前側に壁を出っ張らせてしまったというもので、軽微ではない契約違反と評価されたのだと思います。

では、法令違反はどうでしょうか。法令に適合していることを契約書に記載していない場合はどのように扱われるのでしょうか。

この点は、法令を遵守することは当事者間で当然の前提として契約しているのが通常ですので、法令違反も「欠陥(瑕疵)」となります。とくに建築基準法令は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する「最低の基準」ですので(建築基準法第1条参照)、同法令違反の有無は重要な争点になります。

雑な施工は欠陥?

では、雑な施工はどうでしょうか。法令違反がなくて、契約書や設計図書などの違反がなくても、施工が非常に雑であるということは間々あります。

結論から言えば、「欠陥(瑕疵)」と認定される可能性はあります。当事者間である一定の施工水準が期待されているからです。

しかし、「ある一定の施工水準」というのは抽象的ですね。法令や契約などのように明確な基準となるものがなく、様々な事情を総合考慮した裁判所の価値判断によって決定されるものなので、なかなか見通しが立ちません。

あえて言うなら、雑な工事に見合わない高額な工事代金を支払った場合や、特に美観を重視した建物の場合には、「欠陥(瑕疵)」と認定される可能性が高くなると考えられます。

契約は慎重に!

このように、当事者が契約した内容は、「欠陥(瑕疵)」を判断するための基準となるもので、契約書(契約書に添付された図面、仕様書、見積書も含みます。)は当事者の契約内容を表した証拠となるものですから、契約書に署名捺印するときには事前にその内容をよく確認しましょう。

契約とは当事者間の合意ですので口頭でも有効ですが、その内容が争いとなった場合には、本人の供述だけでは裁判で「言った」「言わない」の水掛け論になってしまいます。裁判で重要な証拠として扱われるのは、当事者が署名捺印した契約書になります。

過去の事例では、業者から「これは仮の契約図面です。後でご要望どおりに変更しますから、とりあえずこの内容で契約してください。」などと説明されて、強引に署名捺印を求められたケースがありました。

しかし、仮の契約書というものはありません。署名捺印をすれば、後で変更されなかった場合、当初の契約が当事者間の契約として扱われてしまうおそれがあります。ときに数千万円という高額な支払いを約束する契約書に署名捺印するわけですから、くれぐれも慎重に行いましょう。

酷い業者の例では、契約書、図面、仕様書などを作成せず、あるいは作ったとしても工事内容が明確でない簡易なものしか作成せず、「これが業界の慣行です」などと説明して工事に着手してしまうケースがあります。

当事者間の契約内容を目に見える形で残さない業者は、それだけで信用できませんので、このような場合は取引自体を見合わせましょう。

契約内容を裏付ける証拠を作る

そうは言っても消費者の立場は弱いものです。業者から「工事が間に合わなくなります」「融資の実行日が迫っています」などと言われれば、やむなく署名捺印に応じてしまう方も多いでしょう。

しかし、その場合でも、口頭での約束を証拠化するなどの自衛手段を講じましょう。例えば、交渉内容を録音する。業者に議事録を作成してもらう。あるいは、こちらが議事録を作成して、業者に署名してもらう。メールやFAXを利用するなどです。

このような交渉経緯からでも当事者が契約した内容を明らかにできる場合があり、「欠陥(瑕疵)」の立証にも役立ちます。

とくに施工途中における契約変更や追加工事の場合、書面によるやり取りがないことが多いので、後で紛争に発展することも多いのです。この工事が本体工事に含まれるのか、追加工事となるのか、無償のサービス工事となるのか、口頭での取り決めがあった場合には、必ず証拠化するように努めましょう。

次回は権利の期間制限のお話です。権利には必ず期間制限が定められていて、この期間を経過すると、救済が非常に困難になりますのでご注意ください。

髙木 秀治 このコラムの執筆者
髙木 秀治(タカギ シュウジ)
欠陥住宅全国ネットに所属。2014年に欠陥住宅関東ネットの事務局長に就任、同ネットで弁護士と建築士による定例相談会を毎月開催。2018年に第二東京弁護士会の住宅紛争審査会の紛争処理委員に就任。プラス法律事務所のパートナー。

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