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第2回 「欠陥(瑕疵)」の考え方 前編

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欠陥現象と欠陥原因

欠陥住宅裁判で被害者側が負けないためにはどうすれば良いか、それは「欠陥(瑕疵)」の主張立証を徹底してやり抜くことです。近道や裏技はありません。「当たり前じゃないか」とお叱りを受けそうですが、その当たり前のことを達成できていないことが多いのです。

そこで質問です。鉄筋コンクリートのひび割れは「欠陥(瑕疵)」でしょうか。

「欠陥(瑕疵)」を理解するには、「欠陥現象」と「欠陥原因」という仕分け方が頭の整理に役立ちます。

例えば、住宅の床が傾いているとしましょう。床に置いたゴルフボールがころころと転がっていきます。これは「欠陥(瑕疵)」でしょうか。

まず、床が傾いていることは「欠陥現象」に当たります。その原因は、床板を雑に貼って傾きが生じたのかもしれません。あるいは、軟弱地盤に打ち込んだ杭が支持層に届いていないために建物全体が傾いているのかもしれません。この欠陥現象の原因が「欠陥原因」であり、裁判で争われる「欠陥(瑕疵)」とは、この原因の方を指します。

「欠陥(瑕疵)」が単に床板の問題だけであれば、補修方法は床板を貼り替えるだけで足り、補修費用は数万円で済むかもしれません。ところが、杭が支持層に届いていないとなると大変です。補修方法としては、別途支持杭を打ち込む必要があるかもしれませんし、そもそもそのような補修が可能かどうかも検討する必要があります。補修費用としては戸建でも数百万円かかるかもしれません。

同様に雨漏りを考えてみましょう。建物内で水がぽたぽたと垂れるのは、「それだけで欠陥だ」と言いたいところですが、厳密には「欠陥現象」に当たります。

その原因が、屋根防水の問題か、外壁の仕上材の問題か、サッシ周りの雨仕舞いの問題か、雨水の浸入経路を特定する必要があります。これが「欠陥原因」です。雨が漏るという「欠陥現象」を確認できたとしても、雨水の浸入経路を特定できなければ、それに応じた補修方法や補修費用まで繋がらないので、請求として完結しないのです。

このように、同じ「欠陥現象」であっても、「欠陥原因」が何かによって請求金額が変わりますので、「欠陥原因」を正確に特定して主張立証することが肝要です。弁護士でも、この認識が不十分なために「欠陥現象」だけを指摘して訴訟提起することがあるので注意が必要です。

鉄筋コンクリートのひび割れは欠陥?

では振り出しに戻りましょう。鉄筋コンクリートのひび割れは「欠陥(瑕疵)」に当たるでしょうか。

通常、ひび割れは「欠陥現象」に当たりますので、その原因を探る必要があります。
しかし、コンクリートのひび割れの原因は無数に考えられます。

例えば、コンクリートは、水、セメント、砂利、砂を練り混ぜて作ります。これら材料の配分割合が強度に大きな影響を及ぼします。水を多く入れ過ぎると強度が落ちますが、流動性が増すので施工しやすくなります。施工を楽にするために水を過剰に入れたコンクリートは「しゃぶコン」と呼ばれ、強度が低く、ひび割れの原因になります。

また、意図的に過剰な水を含ませなくとも、コンクリート打設中に大雨が降り、養生をせずに作業を続ければ、コンクリート中に含まれる水の割合が多くなりますので、同じく強度が落ちてひび割れの原因になります。

逆に、炎天下でコンクリートを打設して、養生をせずに保湿を怠ると、急激な乾燥によりこれもひび割れの原因になります。

また、適切に養生を行っていても、コンクリートが乾燥して固まる過程で、水分が蒸発してコンクリートが収縮し、表面に微細なひび割れが発生することがあります。これは乾燥収縮ひび割れと言われます。

その他にも、軟弱地盤による建物の不同沈下により建物の基礎にひび割れが発生することがあります。また、建物の構造耐力が足りないために建物自体にひび割れが発生することがあります。

このように考えていくと、コンクリートのひび割れの原因は無数に考えられますので、この現象から遡って原因を特定するのは非常に困難を伴います。

では、ひび割れ自体を「欠陥(瑕疵)」と考えることはできないのでしょうか。

この点、数は少ないですが、下級審の裁判所で、ひび割れの数や大きさ、発生している部位などから、ひび割れ自体を「欠陥(瑕疵)」と認定した裁判例があります。

しかし、裁判で認められるひび割れの補修方法は、ひび割れ箇所をU字にカットしてエポキシ樹脂等を充填するもので、補修費用は比較的安価です。そして、ひび割れの原因を特定していないので、補修したとしても再び、ひび割れが発生するおそれがあります。

例えば、軟弱地盤による建物の不同沈下が原因でひび割れが発生した場合、軟弱地盤対策こそ必要なはずです。この対策には相応の費用がかかりますので、ひび割れの補修費用だけではとても足りません。また、ひび割れの補修だけで終われば、建物の不同沈下を止めることができず、いずれまたひび割れが発生してしまいます。根本的な解決にはならないのです。

以上より、「欠陥(瑕疵)」はしっかり特定して主張立証を行いましょう。鉄筋コンクリートのひび割れも可能な限りその原因を探りましょう。

次回も引き続き「欠陥(瑕疵)」について解説していきます。

髙木 秀治 このコラムの執筆者
髙木 秀治(タカギ シュウジ)
欠陥住宅全国ネットに所属。2014年に欠陥住宅関東ネットの事務局長に就任、同ネットで弁護士と建築士による定例相談会を毎月開催。2018年に第二東京弁護士会の住宅紛争審査会の紛争処理委員に就任。プラス法律事務所のパートナー。

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