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第27回 耐震性に関する基本知識 その2

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回のコラムでは耐震等級に関して簡単に解説しました。

地震に対しての性能を計算にて「見える化」するというものですね。

ですが、あくまでも構造設計者が計算によりはじき出す数値であり、耐震等級が高いからそのまま「地震に強い!」と思わないことが大切です。

下の写真は、電気業者が配線を通すルートがなく、構造の大事な「梁」にいくつもの穴をあけて電線を貫通させているものです。

このような状況では、せっかくの耐震等級も、「砂上の楼閣」となってしまうのは言うまでもありませんね・・

さすがに写真のような悪意ある貫通は年に数回しか見かけませんが、まずはきちんとした施工をして初めて、計算通りの性能を満足できることをわかってください。

もう一枚、写真は上棟検査時のものですが、よくよく見ると

屋根の下地が釘1本で止まっている!?
なんていう現場も目にします・・

建物は耐震以外でも、耐風つまり風に対する検討が必要で、特に木造は耐風検討が非常に重要になります。昨今では信じられないような暴風を伴う台風なども頻繁に発生していますから、こういった現場ではまさに計算通りにいかない!とは容易に想像できると思います。

住宅の構造の話を少し掘り下げてみます。

有識者はみな口をそろえて発信していますが、日本の低層住宅では、4号特定というとんでもない法律があるのがそもそもの誤りなのです。

4号特例とは、建築基準法で決まっていますが簡単にいえば小規模な木造住宅は、詳細な構造計算を実施せずに強い壁の配置バランスなどをもとに設計者判断で安全を確かめれば事足りるというものですね。

このような有様ですから、現場では構造に対する配慮や検討、注意がいつまでたっても向上しないんだと思います。

また、構造を考えるうえでは、大前提として「構造計画」と「構造計算」の違いがあります。後者の「構造計算」とは、前回から述べていますが、建築基準法に定められた計算を実施することですね。

一方、構造計画とは計算ではなく、あくまでも構造架構(住宅の柱や梁、壁や床といったフレーム)をきれいに計画することです。

きれい(言い換えればロジカル)に、架構を組んでいくことは、地震時の力が加わった際に、スムーズに力が伝達します。つまり揺れにくく・倒壊しにくいということになります

安定したフレームかどうかを判断する一つの目安には「直下率」が挙げられます。

直下率とは、上下階の柱位置が合致している割合・同様に壁位置が合致している割合です。仮に1階と2階のプランが全く同じ2階建ての住宅があれば直下率は100%ということですね。

下はツーバイメーカーの三井ホームのプランですが直下率は64.7%です。


ツーバイは直下率が高めの安定した架構プランができやすいです。

一方、住林のBF(ビックフレーム)は「梁勝ちラーメン」と謳った工法を採用しています。

この工法は柱の位置を自由に移動できますからメリットとしては、プラン自由度が高い!ということになりますが、一方で直下率は下がってしまう傾向にあります。

どんなことにも言えますが、メリットとデメリットを理解して依頼する建築会社を決めたいですね。

他にも要注意しておきたい構造計画の例ですが
・耐力壁の配置
・狭小間口プラン
・変形矩形プラン(コの字、L字)
等が該当します。

次回は構造計画に関して、もう少し話をしていく予定です。

市村崇 このコラムの執筆者
市村崇(イチムラタカシ)
一級建築士・ホームインスペクター。大手HMの現場監督を経て2007年に設計事務所・工務店を設立、10年間で500棟以上の施工管理を行う。2013年に(社)住まいと土地の総合相談センター副代表に就任。建築トラブルを抱える多くのクライアントの相談に乗る傍ら「絶対に後悔しないハウスメーカー&工務店選び 22社」など多くの本を企画、執筆している。

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