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第13回 ハウスメーカー評価のまとめ 耐震性能編

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れまで各社の特徴を、実際のインスペクション経験に基づき記事としてきましたが、今回から複数回にわたり、評価のまとめを書いていきます。

ハウスメーカー選び、もっと言えば家づくりのご参考になればと思います。

まずは耐震性から。

過去の記事では、各社の耐震性は次の通りの評価にしました。
積水ハウス(鉄骨) :★★★★(4)
ダイワハウス    :★★★(3)
旭化成ホームズ   :★★★★★(5)
パナソニックホームズ:★★(2)
住友林業      :★★★(3)
積水ハウス(木造) :★★★(3)
三井ホーム     :★★★★★(5)
住友不動産     :★★(2)
一条工務店     :★★(2)
セキスイハイム   :★★★(3)
ミサワホーム    :★(1)

まず、大前提としてですがどの会社も耐震等級3を取得できますから、数字や理論上の話では遜色ない「耐震性能」が期待できるはずです。

しかしながら、各社の★評価にこれだけのばらつきがあるのは・・これはやはり、これまでのインスペクションを基に加点・減点をしているからになります。

簡単に各社の特徴を記します。

積水ハウス(鉄骨)ですが、施工は完全子会社の積和建設が実施していますから、施工力は高いと言えます。監理や手配はもちろん、閑散期・繁忙期での対応(各支店での施工応援など)も優れているでしょう。

一方でダイワハウスは自社の施工部隊を持っていませんから、そういった意味で品質のばらつきが目立ちます。このばらつきが★数を減らす要因の一つです。

パナソニックホームズも元々は代理店方式を採用していた名残で、まだまだ現場施工のばらつきが目立ちます。

旭化成ホームズは自社鉄骨工場で製品管理を徹底し構造躯体の品質が高いこともありますが、社内マニュアルの整備などが他社と比較して細かい部分まで決められており、間違いが極力でないような「作り方」になっています。★が多く評価が高い会社は、施工力や管理体制、仕事の発注も含めたことを加味しています。

鉄骨系のハウスメーカーは軽量鉄骨と重量鉄骨を準備していますが、ダイワハウスのみ3階でも計画当初は軽量鉄骨で提案してきますので、コスト安に感じるかもしれませんが、ぱっと見の金額では比較検討できないことを忘れてはいけません。

写真はダイワハウスの基礎配筋検査時のものです。
矢印は、L字型の鉄筋を設置する必要がありますが、施工忘れで指摘したものです。

木造軸組の2社は積水と住友林業です。住友林業のビックフレームは集成材の大きな柱を採用して家を支えていますが、大きい断面の柱はデメリットもあります。

その一つが、新築工事に雨が降った場合の柱の乾燥度合いです。大断面が災いし、乾燥しきっていない状況で次工程へ進んでいくと、引っ越しした後に乾燥収縮が進み、壁面にクラック(ひび割れ)が発生する事案が散見されます。

また、構造架構が梁勝ちラーメンですから、昔の家と違いむりな計画をすると、下階の柱に余計な力(モーメント力)がかかってしまいます。基本は通し柱が良く、壁や柱の直下率が高いほうがいいのは言うまでもありません。

積水のシャーウッドは、無理な平面計画を目にすることもあり、上記の直下率が低いプランも多々見受けられますので要注意です。

次の写真は、住友林業。含水率が超過していた現場の様子です。
床合板は養生シートを実施するようになっていますが、降雨時に合板が濡れると、その後シートが乾燥を妨げることもありますので要注意です。

ツーバイフォー(シックス)では、施工管理を考えると三井ホームに軍配が上がるでしょう。

住友不動産は監理不足による指摘がインスペクションでは多く見受けられます。特にツーバイでは外壁面材の釘打ちが重要な監理項目ですが、釘打ち忘れや、打ち込みが雑なケースが散見されます。

一条工務店はそもそもフィリピンの工場で、外壁をタイルまで貼って出荷していますから釘の施工状況が工場任せで、品質管理に疑義が残ります。また電気配線などを通すために、構造体の一部をはじめからカットして出荷し現場で補強するという作り方も「均一な品質を生む」とは言えませんね。

写真は住友不動産の面材、釘打ち忘れの指摘です。

こちらは一条工務店のもの。構造材の「まぐさ」や「上枠」「頭つなぎ」が工場ですでに切断されたものが搬入されます。

セキスイハイムに関しては他のメーカーと違い、ユニット方式で家をくみ上げていくためジョイント部の施工がきちんとできていないと計算通りの数値は期待できません。「工場という理想の環境でつくる品質」というのが謳い文句ですが、実際にはボックスをクレーンで吊り上げられない現場などは現場施工ですから、そういったケースでの現場監理体制が十分かどうかも確認が必要です。

ミサワの木質パネル接着工法は名前通り、接着剤で止まっているパネルで構成されます。繊維断面の木ですから、接着面だけが強くても・・という印象が残りますね。パネル寸法は芯材30mm*80mmという寸法で、その芯材に両面5mmの合板を貼って構成されていますから、部材断面をツーバイと比較しても一回りサイズダウンしています。ボルト結合の施工不良なども特に気がかりな部分です。

机上の計算では如何様にもなります。
大切なことは、地震時に発生する力がきちんと各部材に伝達されることが重要です。

これは設計のプラン段階からの話であり、振動実験の数値通りには行かないのが注文住宅です。スキップフロア、吹き抜けなども構造架構をきちんと理解したうえで計画していかないと危険な構造になってしまいます。

同時に、計算通りの数値を出すのはあくまでも現場で作業する職人です。スキルとモラルを兼ね備えた施工者がきちんと施工し、それを監理する体制がメーカーにあることが重要になります。

ハウスメーカー評価のまとめ 耐震性能編は以上です。
次回は、断熱・気密編を掲載する予定です。

市村崇 このコラムの執筆者
市村崇(イチムラタカシ)
一級建築士・ホームインスペクター。大手HMの現場監督を経て2007年に設計事務所・工務店を設立、10年間で500棟以上の施工管理を行う。2013年に(社)住まいと土地の総合相談センター副代表に就任。建築トラブルを抱える多くのクライアントの相談に乗る傍ら「絶対に後悔しないハウスメーカー&工務店選び 22社」など多くの本を企画、執筆している。

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