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第8回 土地の境界に関する問題

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回のテーマは、土地の境界です。普段は、あまり土地の境界を意識することはありませんが、ひとたび境界についての争いが生じるとさまざまな手続が必要になりますので、境界についての概要を抑えておくことは大切です。

1土地の境界とは

土地は地表の一部分であり、本来、区切りはありません。しかし、土地を所有したり、土地に対して税金を課すなどの土地を管理する必要から、土地を区分する必要が生じます。その際に土地を区分するのが境界です。

(1)地番の境の境界

土地には、それぞれの筆ごとに公的な番号が振られており、これを地番と言います。それぞれの土地は、隣接する別の地番の土地との間に境界を持ちますが、これが地番の境の境界です。

(2)所有権の境の境界

地番の境の境界とは別に、土地を支配する権限の及ぶ範囲を画する境界もあり、これを所有権の境の境界と言います。

地番の境の境界と所有権の境の境界は一致するのが通常(例えば、Aさんが地番●●番の土地を所有し、その上に建物を所有して住んでいる、といった状態)ですが、一筆の土地の一部が時効取得されるなど、両者が一致しないケースもあるので、注意が必要です。

2境界の不明確性

土地の境界が不明確な場合、さまざまな紛争の原因となりうることから、境界は明確であることが好ましいことは言うまでもありません。

しかし、土地の境界は地表を人為的に区切っているものですので、地震や洪水等の自然現象によって地表の状態が変わることにより、従前の境界が不明確となることもあり得ます。また、自然現象の他にも、測量等の正確性の問題もあります。最近の測量の精度は非常に高いですが、測量が行われたのが何十年も前といった場合、その精度が十分でないこともあり、実情を適正に反映していないこともあり得るのです。

こうした事情から、境界が不明確となり、紛争の原因となる事態が生じることになります。

3境界の確定の要素

土地の境界は、自然の地表を人為的に区分するものですから、もともと何か目印となるものが存在するというわけではありません。

川や尾根等の自然の地形で区分することも多く行われていますが、自然の地形を利用できる場合は限られており、住宅地などではそのような目印となるものはありません。そこで、境界を示す目印として設置されるのが境界標です。境界標が設置されている場合、土地の境界を決定する重要な要素となります。もっとも、境界標の設置の状況や、設置されてからの年月等によっても、境界標が持つ重要性は変わってきますので、必ずしも境界標のみで境界が決定されるわけではありません。

なお、境界標は、隣地の所有者と共同の費用で設置することができるとされており(民法223条)、設置及び保存の費用は隣地所有者と等しい割合で負担(ただし、測量の費用は土地の広狭に応じて負担)するとされています(同224条)。また、境界標を損壊したり移動するなどして土地の境界を認識できなくさせると、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(刑法262条の2)。 境界を決定する要素は、境界標のほか、公図等の図面、境界付近の地形、公簿面積、占有状況等が総合的に考慮されることになります。

4境界確定の手続

土地の境界について争いが生じた場合、これを確定する手続をとる必要が生じますが、問題となる境界が地番の境か所有権の境かで必要な手続が異なります。

(1)所有権の境の境界の場合

所有権の境の境界は、隣地の所有権者同士の話し合いで決めることが可能とされています。
裁判外の話し合いで決まらない場合、所有権確認訴訟等の裁判手続によることになりますが、和解や調停など、裁判手続上での話し合いによっても決めることができるとされています。

(2)地番の境の境界の場合

これに対し、地番の境の境界については、公的な意義を有することから、当事者間で決めることはできないとされており、これを確定するには境界確定訴訟によることが必要となります。
境界確定訴訟では、上で説明した考慮要素に基づいて総合的に判断し、裁判所が境界を確定します。仮に事者間で合意がされていたとしても、境界確定訴訟を提起することは妨げられず、当事者間の合意の存在は、境界確定の際の一考慮要素になるに過ぎません。

〇筆界特定手続

このように、地番の境の境界の確定には境界確定訴訟が必要となりますが、訴訟では時間と費用がかかるうえ、十分な資料が収集されず適切な判断が難しいという問題が指摘されていました。そこで、平成17年に新設されたのが、筆界特定手続です。

筆界特定手続とは、隣地の所有者等の申請権者が、法務局の筆界特定登記官に対して、隣地との筆の境界(筆界)の特定を申請し、登記官が筆界特定委員の調査・意見及び関係者の意見等を踏まえて筆界の特定を行う手続です。簡易迅速に、事実調査を行ったうえで特定するという点に特徴があります。

こうした手続による筆界の特定は、筆界の位置の認識を示すもので、筆界を形成するものではないとされており、当事者を拘束するものではありません。その効力は事実上のものにとどまりますので、筆界の特定に不服があれば、筆界確定訴訟を提起することは妨げられず、訴訟の判決において筆界特定手続と異なる判断がなされれば、判決に従うことになります。

もっとも、筆界特定手続を経た訴訟においては、筆界特定手続の記録が調べられるのが通常であり、事実調査を経て行われた筆界特定手続における判断は訴訟においても考慮されることが想定されますので、事実上の効力にとどまるとはいえ、重要な意味を持つ手続と言えます。

ポイント

土地の境界には、地番の境の境界と所有権の境の境界がある。
土地の境界を示す目印として境界標があるが、必ずしも境界が境界標のとおりであるとは限らないので注意が必要である。
所有権の境の境界は、隣地の所有者の協議により定めることができる。
地番の境の境界は、当事者の協議で定めることはできず、確定するためには境界確定訴訟の手続を経る必要がある。
地番の境の境界についての争いを解決する簡易な手段として、平成17年に筆界特定制度が創設されたが、境界確定訴訟と同じ効力を有するわけではないことに注意が必要である。

次回のテーマは、住宅の相続に関する問題です。

原田真 このコラムの執筆者
原田真(ハラダマコト)
一橋大学経済学部卒。株式会社村田製作所企画部等で実務経験を積み、一橋大学法科大学院、東京丸の内法律事務所を経て、2015年にアクセス総合法律事務所を開所。
第二東京弁護士会所属。東京三弁護士会多摩支部子どもの権利に関する委員会副委員長、同高齢者・障害者の権利に関する委員会副委員長ほか

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