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第20回 売る側が使う心理テクニック:その14:現状維持バイアス(最終回)

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ンサルタントの山本広高です。
前回は「保有効果」と呼ばれる、自分が所有したモノに対しては、価値が上がり手放すことが難しくなる心理現象についてご紹介しました。

第二十回は「売る側が使う心理テクニック:その14:現状維持バイアス」です。前回紹介しました保有効果と同じく、現状維持バイアスも変化に対する心の抵抗のようなものです。未経験なこと、未知なものに対して受け入れられず、心理的に拒否して現状のままがよいと判断してしまうことです。

抽象的な表現ですが、現状バイアスは「現状、問題がないのであれば、わざわざ変化させる必要はない、むしろ変化することで問題が発生する。多少の改善が望めるくらいなら変化はリスクだし、面倒だ。」という意識をもつことです。

例えば、以下のような状況はどうでしょうか。

省エネで劇的に電気代が下がる冷蔵庫が販売されています。新規にその冷蔵庫を購入したら、2年で冷蔵庫代は元が取れます。でも、今動いている冷蔵庫は何の問題もなく動いています。ただ、古いタイプなので電気代は高くなってしまいます。

あなたはこの場合、冷蔵庫を買い換えますか?

合理的な判断をするのであれば冷蔵庫の買い替えをするに違いありません。しかし多くの人は、今使っている冷蔵庫は動いているし、買い替えるまでもないかな、と判断するでしょう。例え買い替えのメリットが高くても、買い替えの手間や労力を考えると買い換えない、という結論になりがちです。

マンションの購入や一軒家の購入でも実は起こりえることです。親戚や知人が業界の人だったら、基本的にその事業者の商品を選ぶという判断になります。必ずしもその選択が間違ったものではない可能性もあります。しかし、それはその方との関係性によって断ることもできますが、わざわざ断って他を探す、という労力を拒否している心理状況にも陥りがちです。

現状維持バイアスを解除するのは以下の対応が考えられます。

1. 現状維持バイアスかどうか自問自答する
・何かしらの購入判断時に現状維持バイアスが自分に掛かっているか自分を見つめる癖を付けましょう。

2. 物事を数値化し、定量的に判断する
・主観的な考えを取り除き、数値に落とし込むことが必要です。

3. 第三者に評価してもらう
・第三者から客観的な意見をもらうことが重要です。

賃貸からのマンション購入や、一軒家購入時はカタログを見ているだけで心が躍るので、現状維持バイアスは働きづらいですが、知人からの紹介や、親族からの紹介となると一転して現状維持バイアスがかかりやすいとも言えます。また、あまりに沢山の見学会に行き、説明を受けすぎると思考停止に陥り、何がいいか分からなくなってしまい、とても対応がよかった営業の印象に引っ張られる傾向があります。

もちろん現状維持バイアスをはじめ、様々な心理の罠は誰しもが陥るものです。しかし、“立ち止まって冷静に考える”ことで回避できるのも事実です。

二十回にわたり、買う側、売る側の心理についてご紹介させて頂きました。
皆様の購入判断の一助になることを切に望みます。

山本広高 このコラムの執筆者
山本広高(ヤマモトヒロタカ)
株式会社THINCESS代表取締役。JIMC日本統合医療センター四ツ谷なかよし鍼灸院を経営。様々な業種における販売支援、新事業立ち上げ支援を行う現場重視のコンサルタント。

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