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第9回 マンションと戸建てと賃貸どっちがお得?

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ち家と賃貸のどちらが経済的にお得なのかという議論は、雑誌やインターネットでもよく目にしますし、住宅購入を検討した事のある方であれば一度は気になった事があるのではないでしょうか。実際には、“損得”が自宅を購入する決め手になることはほとんどないとは思いますが住宅購入を検討するきっかけにはなるかもしれません。

さて、このテーマの答えとしては下記のうちどれが正解なのでしょうか。

住宅費にかける総額は
① ずっと賃貸のままの方が高い
② 途中で家を買った方が高い
③ どちらもそれほど変わらない

実は、これもよく言われていることなのですが、①~③のどれもが正解になりえます。なぜなら、何歳の時にどんな家を買うのか、どんな賃貸物件と比較するのかなど、状況によって結果は変わるからです。そのため、持ち家が良いのか賃貸が良いのかは、FPの間でも意見が分かれる所でどちらが正解ということもおそらくないでしょう。

ただ、今回はそれを承知の上で、数あるシチュエーションの中の1例としてシミュレーションし、比較検討してみたいと思います。

結果の詳細については下記のシミュレーション結果を見て頂ければと思うのですが、私の考えを先に言わせて頂くと、私はずっと賃貸で生活していくよりもどこかで家を購入する(もしくは親から自宅を相続する)方が良いと思っています。

実際の所、家を買った方が良いのか、賃貸の方が良いのかについては、金銭的な問題以外にも家族の生活の状況や価値観による所の方が大きいと思いますが、お金の面に関して言えば持ち家の方が良いと思っています。

理由は一つで、持ち家の方が老後のキャッシュフローが安定するからです。
総額でどちらが高いか安いかという話ではなく、今後受け取れる年金が減っていくかもしれない中で、もし収入が年金だけという状況であれば、その中で家賃を支払い続けていくのはやはり不安です。
もちろん、家を買ったからと言ってローンの支払いが終わったらそれ以降お金が全くかからないかと言うとそんな事はなく、リフォーム費用などでまとまったお金が必要にはなってきますが、ただ、それでも住み続けるために毎月家賃を支払っていかなければならない状態に比べたら精神的負担はずっと軽いと思います。

長生きすればするほど貯蓄を切り崩していく可能性もあり、長生きのリスクに備えるという意味で、老後に備えて自宅を買っておく安心感は大きいと私は考えています。

そのため、シミュレーションにおいては、総額の比較だけではなく、キャッシュフローという点にも着目して見て頂ければと思います。多くの家計を見させて頂いた経験から、重要なのは総額よりもキャッシュフローだと感じています。例え、住宅費にかける総額が高くてもキャッシュフローがプラスであれば問題ないですし、逆に総額がいくら安くてもキャッシュフローがマイナスだと生活を続けていくことは困難です。

■シミュレーション条件

30歳の夫、30歳の妻、0歳の長女の3人家族が、今後住宅費に毎月14万円掛けるとしたら、持ち家(戸建て、マンション)と賃貸で、住宅費にかかる費用がどう変化するかシミュレーションして比較してみます。
※ただし、賃貸の方は65歳を迎えたら少し手狭な家賃10万円の家に引っ越す事とします。

賃貸の場合は、家賃(管理費、共益費込み)を14万円に、持ち家(マンション)の場合は、住宅ローン返済+管理費・修繕積立費を14万円に、持ち家(戸建て)の場合は、住宅ローン返済を14万円にそろえてシミュレーションしてみます。また、持ち家の場合は購入時に頭金を500万円入れる事とします。
その結果、購入できるマンションの物件価格は4100万円、戸建ての物件価格は5100万円となりました。その他細かい条件は下記の通りとします。

【賃貸】
・家賃:14万円(管理費、共益費8000円込)⇒65歳で家賃10万円に引っ越し
・更新料:2年に1回1ヶ月分 14万円
・引っ越し資金:10年後、20年後、65歳の時に合計3回引っ越し(引っ越し代+仲介手数料+礼金)50万円

【マンション】物件価格4100万円
・頭金:500万円
・購入時諸費用:200万円
・管理費・修繕積立金 :毎月3万円
・住宅ローン(3600万円):毎月110,226円
※金利1.5%、35年返済で試算
・火災保険、地震保険料:年間1.3万円
・団体信用生命保険料:総額243万円
・固定資産税:年間12万円
※実際には当初数年間の軽減処置や経年による減少など年数に応じて変動するが、今回のシミュレーションでは簡易的に一定とする
・リフォーム費用:65歳時に200万円
・住宅ローン控除総額:314万円
※住宅ローン控除を最大限使えた場合の試算

【戸建て】 物件価格5100万円
・頭金:500万円
・諸費用:250万円
・住宅ローン(4600万円):毎月140,844円
・火災保険、地震保険料:年間2.5万円
・団体信用生命保険料:総額310万円
・固定資産税:年間8万
※実際には当初数年間の軽減処置や経年による減少など年数に応じて変動するが、今回のシミュレーションでは簡易的に一定とする
・リフォーム費用:65歳時に500万円
・住宅ローン控除総額:388万円
※住宅ローン控除を最大限使えた場合の試算

【50年間の住宅費総額比較】
50年間の総額は賃貸が最も高く8208万円、次いでマンション購入が7965万円(賃貸との差額243万円)、最も安かったのが戸建て購入で7587万円(賃貸との差額621万円)という結果になりました。賃貸の場合、65歳から家賃10万円に下げているため、仮に家賃14万円のまま50年間住み続けた場合は、圧倒的に賃貸の総額は高くなります。

マンションを購入した場合と賃貸の比較では、かかってくるコストの総額はマンション購入の方が高くなっていますが、自宅を購入すると住宅ローン減税が使えるため、その分をコストから差し引くと結果的にマンションの方が安くなりました。

マンションの場合、戸建てと違い、ローンの支払いが終わっても管理費と修繕積立費がその後もかかってくるため、ずっと家賃を支払っていく賃貸とコストにそれほど差がでなかったと思われます。ただ、今回のシミュレーションでは修繕積立費を一定としましたが、実際には修繕積立費は年数と共に上がっていく場合もあるため、その場合マンション購入の方が総額が高くなるという結果に変わるかもしれません。

戸建てを購入した場合と賃貸の比較では、戸建ての方が賃貸よりも621万円安い結果となりました。これは戸建ての場合、住宅ローンの支払いが終わった後は、継続的にかかってくるお金としては固定資産税や火災保険料ぐらいなので、長く住み続ける程、賃貸よりも安くなってきます。ただし、経年劣化の度合いによってはリフォームの費用が大きくかかってくる事もあるため、どの程度のリフォームが必要になってくるかによって結果は変わってきます。

【住宅費累積】
住宅費累積のグラフを見てみると、当分の間賃貸の方が総額は安く、45年後に賃貸が戸建てのコストを上回り、46年後にマンションを上回るという結果になりました。
つまり、50年という期間でみてみるとかなり後半の方になってから賃貸が持ち家のコストを上回ることになるため、人生の後半で家の購入を検討する場合には、購入するよりもそのまま賃貸のままの方が総額は安く抑えられるかもしれません。

【住宅費キャッシュフロー】
次に注目して頂きたいのは、キャッシュフローのグラフです。
36年後以降の支出は賃貸よりも持ち家の方が、特に戸建ては低い状態がずっと続くため、長生きすればするほど賃貸の方が家計を圧迫していきます。ただし、リフォームによる大きな支出は賃貸の場合にはかかってきません。
若いうちは頭金や諸費用が掛からない分、賃貸の方がらくで、老後は持ち家の方が安心といった感じでしょうか。寿命は読めないので想定するのが難しい所ですが、もし100歳まで長生きした場合、賃貸の場合は30年以上家賃を支払っていくことになります。仮に家賃が家計を圧迫し、年金収入を上回る支出が続いていった場合には貯蓄をどんどん取り崩していくことになるため、自宅購入は長生きに対する備えにもなります。

持ち家と賃貸による金銭的メリット、デメリットについて上記以外の点についてもまとめてみました。

■持ち家メリット

・老後は(住宅ローンの支払いが終わっていれば)支出を抑えられる
・住宅ローン返済後は資産として残る
・団体信用生命保険に加入していれば、万が一の時には残された家族に自宅を残すことが出来る。
・戸建ての場合、リバースモーゲージ(自宅を担保に老後資金を借りられる)が使える
・住宅ローン控除が使える

■持ち家デメリット

・購入時やメンテナンスにまとまった費用が掛かるため現金が減ってしまう
・毎月の収支が厳しくなっても賃貸のように引っ越して住宅費を調整する事は出来ない。
※自宅を売却できる場合は別

■賃貸メリット

・まとまった初期費用やメンテナンス費用がかからない
・その時の家計状況に合わせて引っ越す事により住宅費(家賃)を調整できる。

■賃貸デメリット

・老後も住宅費(家賃)がかかり続ける
・資産として残らない

■結論、まとめ

いかかでしょうか。やはり前提条件によって結果が変わってくるというのが今回改めてシミュレーションをしてみた私の感想です。

ただ、例えば「老後は戸建てが最も支出が少なく賃貸が最も支出が高い」「マンション購入の場合は意外と老後も管理費・修繕積立費で継続的なお金がかかってくる」「賃貸が持ち家のコストを上回るのはかなり後半になってから」など大まかな傾向は変わらないと思いますので今後のライフプランニングの参考にはなるのでないでしょうか。

実際の所は、住宅を購入しようか迷っているタイミングで、今住んでいる賃貸物件と、購入を検討している具体的な物件を比較し、将来のライフプランに合わせてキャッシュフロー表を作成してみると、どちらの方が良いのか、それともどちらもそれほど変わらないのかが見えてくると思います。

ただ、冒頭でお話しした通り、実際、購入するかしないかの決め手は損得以外の価値観や生活の状況による所が大きいと思います。理屈ではなく、持ち家が欲しくなったらその時買うでしょうし、転勤が多い仕事であれば賃貸のまま暮らしていくのを選ぶのかもしれません。今回のコラムについては、将来についてご家族で考えるきっかけとして読んで頂ければと思います。次回は住宅にまつわる贈与と相続の制度について解説していきます。

松井大輔 このコラムの執筆者
松井大輔(マツイダイスケ)
住宅資金に限らず教育資金や老後資金を含めた総合的なライフプランニングについて年間200件超の個別相談に応じているお金の専門家(ファイナンシャルプランナー)

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