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第7回 繰り上げ返済の基礎知識と資金計画

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【繰り上げ返済とは】

り上げ返済とは、毎月の返済とは別に借入金の一部もしくは全額をまとまったお金で返済してしまうことです。毎月返済分には元本の返済とは別に利息分も含まれていますが、繰り上げ返済する場合は返済金額全てが元本返済に充てられるため、その返済した元本にかかる将来支払うべきだったはずの利息分を減らし、総返済額を減らすことが出来ます。
繰り上げ返済は基本的にいつでも行えますが、金融機関と返済額によっては手数料がかかったり最低返済金額が決められています。手数料がかかる場合で頻繁に繰り上げ返済を行いたいという場合には、手数料にも注意して繰り上げ返済の計画を立てる必要があります。ネット銀行は比較的手数料も無料で1円から繰り上げ返済でき、大手銀行でもインターネットで手続きをすれば借り換え手数料が無料だったりします。

【繰り上げ返済の仕組み】

繰り上げ返済には、期間短縮型と返済額軽減型という2種類の方法があります。 期間短縮型は、繰り上げ返済することによって毎月の返済額は変えずに、返済期間を当初の予定よりも短くします。返済額軽減型は、返済期間はそのままで毎月の返済額を少なくします。下記がそれぞれのイメージ図になります。

どちらの方法も利息が減ることによって、総返済額を減らす事が出来ます。しかし、残高、残りの返済期間、金利が同じ場合、期間短縮型の方が返済額軽減型よりも軽減できる利息額が多く、総返済額を減らす効果は大きくなります。

次にそれぞれの繰り上げ返済で利息がどう減るか、仕組みは下記の図のようになります。

繰り上げ返済を行った場合、返済額は全て元金部分に充てられるため、それに応じた利息分が軽減されます。上図からもわかるように住宅ローン支払い初期は、毎月支払っている金額の大半は利息になります。そのため、繰り上げ返済の時期は早ければ早い程、利息軽減効果は大きくなります。また、金利が高い程、利息が大きいため繰り上げ返済による利息軽減効果は大きくなります。そのため、もし2つ以上住宅ローンを借りている方は、金利の高い方、借入金額の多い方、残存期間の長い方を優先的に繰り上げ返済すると良いでしょう。

期間短縮型と返済額軽減型のどちらの方法で繰り上げ返済すべきかについては、下記を参考にしてください。特に毎月のキャッシュフローに問題が無ければ、利息軽減効果が高く、老後の収支が安定する期間短縮型を選ぶと良いと思います。

■期間短縮型を選ぶ理由
・退職までに(早期に)住宅ローンを終わらせたい
・少しでも効率よく利息(総返済額)を減らしたい

■返済額軽減型を選ぶ理由
・毎月のキャッシュフローを改善したい
例)数年後には教育費が増えそうなので毎月の返済額を減らしたい
収入が減ったので毎月の支出を減らしたい
変動金利で借りていて金利が上がり毎月の返済額が増えたので元の返済額に抑えたい

【繰り上げ返済シミュレーション】

次に上記2つの方法で繰り上げ返済を実施した場合に、どれぐらいの効果があるのか具体的に数字でシミュレーションしてみます。

・シミュレーション条件
借入金額:3,000万円
返済期間:35年
固定金利:1.5%
毎月返済額9万1,855円
ボーナス払いなし

■3年後に「100万円」を繰り上げ返済した場合

■10年後に「100万円」を繰り上げ返済した場合

上記シミュレーション結果からもわかる通り、同じ時期に同じ金額で繰り上げ返済した場合、期間短縮型の方が返済額軽減型より利息軽減額は多くなります。また、同じ金額を返済するのであれば早いタイミングで繰り上げ返済した方が利息軽減額は多くなります。

【住宅ローン控除と繰り上げ返済の効果検証】

次に、繰り上げ返済は、ある程度お金が貯まったら少額でもその都度こまめに返した方が良いのか、それともしばらくの間お金を貯めてまとめて大きく返済した方がよいのか、どちらがお得なのかについてですが、一般的には少しでも早いタイミングで繰り上げ返済をした方が利息軽減効果は大きいため、繰り上げ返済手数料を考慮してもこまめに返済していった方が総返済額は少なくなると言われています。
ただ、繰り上げ返済をするとローン残高が減ることによって、住宅ローン控除の効果(住宅ローン控除とは年末時点の住宅ローン残高の1%の金額を納めた税金から10年間差し引くことが出来る制度のことです)は薄れてきます。そのため、住宅ローン控除が使える10年間は繰り上げ返済を控え、11年目にはじめて繰り上げ返済しようと考える方もいます。
実際の所、こまめに返済していった方がよいのか(繰り上げ返済の効果を最大限使う)、11年目にまとめて返済した方がよいのか(住宅ローン控除の効果を最大限使う)どちらがより利息軽減効果が高いのかについて、金利と借入金額を変えて何パターンか試算した結果が下記になります。※繰り上げ返済手数料については考慮していません。

パターン1
借入金額:3000万円、金利:0.5%、返済期間:35年
■1~10年間毎年100万円繰り上げ返済した場合

■1~10年間繰り上げ返済なし、11年目に繰り上げ返済1000万円した場合

住宅ローン控除の軽減効果が大きいため、10年間繰り上げ返済しないで11年目にまとめて繰り上げ返済した方がお得

パターン2
借入金額:4000万円、金利:0.5%、返済期間:35年
■1~10年間毎年100万円繰り上げ返済した場合

■1~10年間繰り上げ返済なし、11年目に繰り上げ返済1000万円した場合

住宅ローン控除の軽減効果が大きいため、10年間繰り上げ返済しないで11年目にまとめて繰り上げ返済した方がお得

パターン3
借入金額:5000万円、金利:0.5%、返済期間:35年
■1~10年間毎年100万円繰り上げ返済した場合

■1~10年間繰り上げ返済なし、11年目に繰り上げ返済1000万円した場合

住宅ローン控除の軽減効果が大きいため、10年間繰り上げ返済しないで11年目にまとめて繰り上げ返済した方がお得

パターン4
借入金額:3000万円、金利:1%、返済期間:35年
■1~10年間毎年100万円繰り上げ返済した場合

■1~10年間繰り上げ返済なし、11年目に繰り上げ返済1000万円した場合

繰り上げ返済の軽減効果が大きいため、毎年繰り上げ返済した方がお得

パターン5
借入金額:4000万円、金利:1%、返済期間:35年
■1~10年間毎年100万円繰り上げ返済した場合

■1~10年間繰り上げ返済なし、11年目に繰り上げ返済1000万円した場合

住宅ローン控除の軽減効果が大きいため、10年間繰り上げ返済しないで11年目にまとめて繰り上げ返済した方がお得

パターン6
借入金額:5000万円、金利:1%、返済期間:35年
■1~10年間毎年100万円繰り上げ返済した場合

■1~10年間繰り上げ返済なし、11年目に繰り上げ返済1000万円した場合

繰り上げ返済の軽減効果が大きいため、毎年繰り上げ返済した方がお得

パターン7
借入金額:3000万円、金利:2%、返済期間:35年
■1~10年間毎年100万円繰り上げ返済した場合

■1~10年間繰り上げ返済なし、11年目に繰り上げ返済1000万円した場合

繰り上げ返済の軽減効果が大きいため、毎年繰り上げ返済した方がお得

パターン8
借入金額:4000万円、金利:2%、返済期間:35年
■1~10年間毎年100万円繰り上げ返済した場合

■1~10年間繰り上げ返済なし、11年目に繰り上げ返済1000万円した場合

繰り上げ返済の軽減効果が大きいため、毎年繰り上げ返済した方がお得

パターン9
借入金額:5000万円、金利:2%、返済期間:35年
■1~10年間毎年100万円繰り上げ返済した場合

■1~10年間繰り上げ返済なし、11年目に繰り上げ返済1000万円した場合

繰り上げ返済の軽減効果が大きいため、毎年繰り上げ返済した方がお得

以上、まとめると下記のような結果になりました。 少額でもこまめに繰り上げ返済していくのと、住宅ローン控除を10年間使い切ってからまとめて返済するのとどちらがお得かは金利水準や借入金額、また繰り上げ返済の時期や金額によって異なります。今回のシミュレーション結果も一例に過ぎないため、実際に自分が繰り上げ返済していく場合、どちらがお得か知りたいという方は、ファイナンシャルプランナーに相談してシミュレーションしてもらうと良いでしょう。


毎年繰り上げ返済した方が効果が高い・・・繰上
住宅ローン控除を最大限使ってまとめて返済した方が効果が高い・・・住宅

今回の条件では、金利が高い場合はこまめに繰り上げ返済を、金利が低い場合は繰り上げ返済せずに住宅ローン控除を最大限活用して11年目に繰り上げ返済した方がお得という結果になりました。

【繰り上げ返済の注意点】

繰り上げ返済は前述のように、早いタイミングで多く返済する程メリットは大きくなります。ただし、以下のような注意点もあります。

・住宅ローン控除の打ち切り
住宅ローン控除とは、年末時点の住宅ローン残高の1%の金額を納めた税金(所得税、住民税)から10年間差し引くことが出来る制度です。
この制度を利用するにはいくつか条件があるのですが、その条件の1つに『返済期間が10年以上の借入であること』というものがあります。
例えば、当初10年以上の返済期間で借り入れしていた住宅ローンを、期間短縮型の繰り上げ返済をした結果、返済期間が10年未満になってしまった場合は、住宅ローン控除はその時点で打ち切られてしまいます。また、住宅ローンの借り換えをした場合も同様に注意が必要で、借り換えをした結果、返済期間が10年未満で借り入れしてしまうとそれ以降住宅ローン控除は使えません。
ちなみに、住宅ローン控除は年末時点のローン残高の1%となっているため、もし繰り上げ返済するのであれば、一般的に年末よりも年始の方がお得です。12月に返済してしまうとその分残高が減って控除分が少なくなってしまうからです。

・資金ショートのリスク
繰り上げ返済を早期にどんどん行って総返済額を減らそうと計画される方も多いですが、無計画にむやみやたらと繰り上げ返済をしていくと手元資金が少なくなり、必要な資金の準備が出来なくなってしまう恐れがあります。
例えば、繰り上げ返済したことによって手元資金が少なくなり、子供の大学資金が足らず に教育ローンを借りる事になってしまった、では本末転倒です。
子どものいるご家庭の場合は将来の教育資金を確保出来るかしっかりライフプランニングを立ててから繰り上げ返済していくことをお勧めします。また、急な出費(例えば冠婚葬祭、家具家電の買い替え等)に耐えられるよう予備資金もしっかりと確保しておくと、より安心だと思います。繰り上げ返済することによって、総額で支払うお金を減らす事が出来ますが、手元の使えるお金を少なくしてしまう一面もあるためしっかり考えて行う事が大事です。

【繰り上げ返済の資金計画】

今は住宅ローン金利が非常に低くなっているため、最近住宅を購入した人は昔程、繰り上げ返済の効果は薄れてきていますが、それでもタイミングと金額によっては数百万円の利息軽減効果が出る場合もありますし、もともと長期の返済期間で借りていた場合には、繰り上げ返済によって、退職前に完済できるよう老後のキャッシュフローを改善できるため資金に余裕がある場合は繰り上げ返済していくと良いでしょう。
ただし、前述のようなリスクは避ける必要があり、そのためには繰り上げ返済も計画的に行う必要があります。具体的にはキャッシュフロー表を作成し、途中で資金がショートしないか事前に検証してみることをお勧めします。目の前の繰り上げ返済にとらわれて途中資金が足りなくなってしまっては元も子もないので、優先事項として損得よりもまずはキャッシュフローについて考える事が非常に重要となってきます。
例えば、共働きで今後まだ出産する可能性がある場合は妻が産休、育休になっても資金がショートしないか、子供の大学資金は学資保険等で確保できているか、などについてシミュレーションしてみます。当たり前のことですが、利息軽減効果の大きい期間短縮型の繰り上げ返済は、繰り上げ返済したことによって返済期間中、楽になる訳ではなく将来楽になる方法なので、むしろお金が出ていくことによって返済が終了するまでの間は資金的には厳しくなるということは意識しておきましょう。やはり、住宅購入時と同じように、繰り上げ返済するときにもライフプランニングを立てて将来のキャッシュフローを確認する事は非常に重要となってきます。

次回は、住宅ローンの借り換えについて解説していきます。
松井大輔 このコラムの執筆者
松井大輔(マツイダイスケ)
住宅資金に限らず教育資金や老後資金を含めた総合的なライフプランニングについて年間200件超の個別相談に応じているお金の専門家(ファイナンシャルプランナー)

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