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第10回 新築住宅で利用されている住宅検査の基礎知識

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築住宅の建築過程においては、どの住宅に対しても様々な住宅検査もしくは検査に準じたものが利用されています。それは注文建築で建てる家でも建売住宅でも同様です。それでも、なかなか欠陥工事や施工ミスに関するトラブルが無くなることはなく、ニュースで目にすることがあります。今回は、新築住宅の建築過程で一般的に利用されていることがある様々な検査について解説しており、施主や購入者の皆様が住宅業界の検査に関する実態を把握することができます。これによって、消費者が自ら施工品質への対応を検討することができ、家づくりや住宅購入で欠陥住宅問題に遭遇するリスクを抑えることができます。

1住宅検査にもいろいろある

住宅を新築する過程では、本当にいろいろな検査があります。但し、その全ての検査が全ての住宅において利用されているわけではなく、個々の建物によってどこまでの検査が利用されているかは異なります。まずは、検査の種類を大きくわけて以下3つに分類してみます。

注文建築で家を建てるときの基本的な流れは以下の通りです。

  1. 住宅供給者による検査
  2. 制度等に基づく検査
  3. 施主や購入者が依頼する住宅検査

この分類は筆者の考えで分類しているものですが、こういった分類が住宅業界において明確にされているわけではないため、消費者目線ではわかりづらいところもあったと思われます。

1つ目の「住宅供給者による検査」は、住宅を建てる建築会社(工務店やハウスメーカーと呼ばれている)および分譲する不動産会社が自ら実施する検査のことです。本来であれば、自社で建築したり販売したりするものですから、検査を他人任せで考えず、建築会社や不動産会社の自社検査(社内検査)で施工品質をきちんと管理できているべきです。
しかし、現実には、これができている住宅供給者が少ないことから、いつまでも欠陥工事や施工ミスの問題がなくならないと言えます。

2つ目の「制度等に基づく検査」は、建築基準法で規定されているものや瑕疵保険に加入するためのものなどです。これに分類しているもののなかには、建築会社や不動産会社が第三者機関による検査だと呼んでいるものも含まれますが、どこまで第三者性を担保できているのか、また欠陥や施工ミスを無くせるほどの検査をしているのかについては異論も多いです。

3つ目の「施主や購入者が依頼する検査」は、消費者が自らの費用負担で自らが選んだ住宅検査会社に検査を依頼するもので、2000年代から利用が増え続けているものです。一般的には、これに分類される検査が最も欠陥や施工ミスを抑制するために役立っていますが、その分、費用負担も小さくありません。
それでは、以降で3つの分類それぞれに関して、1つずつ詳しく解説していきます。

2住宅供給者による検査

ここでいう住宅供給者とは、建築会社(ハウスメーカーや工務店)や建売住宅の事業主である不動産会社を指しています。供給者による検査を自社検査や社内検査などと呼ぶことが多いですが、自社検査に相当するものでもいろいろなものがあるため、紹介していきます。

  1. 監理者による監理
  2. 現場監督による管理
  3. その他の建築会社による自社検査
  4. 不動産会社による検査(建売住宅の場合)

自社検査もしくはそれに相当するものとしては、以上の4点が挙げられます。

2-1.工事監理者による監理

設計図の集合体のことを設計図書(せっけいとしょ)と言いますが、この設計図書と現場に相違ないか照合することを工事監理と言います。これは、工事監理者が行う業務で、多くの住宅においてはその住宅の設計者がこの工事監理者になっています(その住宅の設計者以外でも工事監理者になることはできる)。
ハウスメーカーによって建築されている住宅の多くにおいて、この工事監理者が適切に監理することはありません(適切に実施していることは稀です)。住宅の供給棟数が多い会社ともなれば、監理者が担当する棟数が多くなりすぎ、実際に監理することは現実的ではありません。
この工事監理を期待しやすいのは、建築士に対して施主が設計と工事監理を直接に委託しているケースです。設計料だけではなく、工事監理の報酬も施主が負担して依頼している取引では、監理業務に対して期待することもできるでしょう。また、小規模な建築会社のなかには自社で工事監理をきちんとしている会社もあります。

2-2.現場監督による管理

現場監督は主に工程の管理(工事の進捗・施工業者の手配など)を業務としています。
小規模な建築会社では、現場監督が品質管理の業務を担っていることもありますが、多くの住宅では現場監督は品質管理をしていません。そもそも、そのような役割を会社から求められていないことが多く、経験上、そのような知識や能力を備えていないことが大半です。

2-3.その他の建築会社による自社検査

建築会社によっては、工程の節目で自社検査(社内検査)を実施していることがあります。例えば、基礎配筋検査や構造躯体(上棟後)の検査などです。後述する「建築確認・中間検査・完了検査」や「住宅瑕疵保険の検査」と同じタイミングで実施することもあります。
しかし、建築会社による自社検査は建築途中では実施することなく、完成時のみ実施している会社も少なくありません。建築確認制度に基づく検査等があるのだから、必要ないだろうと考えている業者もありますが、自社検査をしないという姿勢にそもそも問題、業界体質というものが見て取れます。

2-4.不動産会社による検査(建売住宅の場合)

建売住宅では、売主にあたる不動産会社が自ら建設業もしていない限りは、不動産会社から建築会社に工事を発注しているわけですが、その不動産会社は現場のことにそれほど関心を持っていないことが多く、品質管理を一切していないことが大半です。
建設業もしている不動産会社(パワービルダーと呼ばれる業態はこれにあたる)も、施工品質の管理意識は低いことが多く、買主としてはあまり多くを期待しない方が無難でしょう。

3制度等に基づく検査

建築する自社で行う住宅検査ではなく、他者が行う検査にもいろいろなものがあります。いつまでも欠陥工事や施工ミスなどの問題が無くならないことから、検査に関する制度も強化されてきているのですが、残念ながら適切に機能しているとは言い難いものがあります。

そもそも、施工品質を保つための検査制度ではないものも含めて、紹介しましょう。

  1. 建築確認・中間検査・完了検査
  2. 住宅瑕疵保険に加入するための検査
  3. 住宅性能表示制度に基づく現場検査
  4. フラット35の現場検査

ここでは代表的なものとして以上の4点を紹介していますが、以降で詳しく説明します。

3-1.建築確認・中間検査・完了検査

建築基準法で定められた制度です。建築物の計画内容が建築基準法や関係する規定に適合しているかどうか、工事着手前に確認し(建築確認)、その通りに建築されているか建築途中で検査し(中間検査)、さらに完成時にも検査する(完了検査)ものです。
これは、法規準に適合しているかどうかを確認するものであって、そもそも施工品質にまで踏み込んだ検査をしているわけではありません。この制度があるから安全だ、大丈夫だと建築会社等から説明を受ければ赤信号だと考えてください。

3-2.住宅瑕疵保険に加入するための検査

新築住宅を建てたり買ったりするときには、10年保証という言葉を聞いた人は多いでしょう。建築会社や不動産会社が負っている保証義務のことですが、会社によっては倒産等により保証義務を履行できないことも考えられます。
その義務を担保するため、保証金を供託するか住宅瑕疵担保保険に加入するかのいずれかが住宅瑕疵担保履行法によって建築会社等に義務付けられています。
大手企業は保証金を供託していることも多いですが、中小零細企業は住宅瑕疵担保保険へ加入する方を選択していることが多数です。そして、この保険に加入するためには検査を受ける必要があり、しばしば「瑕疵保険の検査を受けているから安心だ」と消費者が説明を受けていることがあります。
しかし、その検査の実態は、瑕疵保険の基準に適合しているかどうかを判定しているものであって、施工品質をきちんと管理しているわけではありません。基礎配筋や上棟後において短時間の検査をしているのみです。ちなみに、他の検査をオプションで追加できるものもあります。

3-3.住宅性能表示制度に基づく現場検査

住宅性能表示制度というものがあります。これは、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づくもので、前述した10年保証もこの法律で規定されているものです。この法律では、10年保証の他に住宅性能表示制度と住宅紛争処理機関についても規定されていますが、ここでは住宅性能表示制度についてのみ説明します。
住宅性能表示制度は、住宅の性能(例えば、構造の安定・火災時の安全・劣化の軽減など)について共通のルールに基づいて表示することで、消費者が住宅の性能を理解しやすいようにしているものです。その表示通りに建築されているか現場検査をしますが、これもまた施工品質を管理しているわけではありません。

3-4.フラット35の現場検査

フラット35の融資を利用できる住宅であるときには、その検査を受けているから安心だと説明を受けることがあります。この融資を受けるためには、住宅金融支援機構が定めている技術基準があり、それに適合しているものであるか物件検査(現場検査)を受けなくてはいけません。
その技術基準とは、基礎の高さを地面から40cm以上とすることや室内温度を保って結露を防止する構造とすることなどといった建物の仕様に関することが規定されています。つまり、この検査もまた施工品質の管理に関するものではなく、基準に適合した工事をしているか確認するものです。
住宅瑕疵保険の検査や住宅性能表示の検査、フラット35の検査があることを理由に、施工品質の安全性を説明されることがあれば、黄色信号というところでしょう。

4施主や購入者が依頼する住宅検査

3つ目の検査の分類として、施主や購入者が依頼する検査について説明します。これは、何らかの制度に基づく検査というものではなく、注文住宅の施主や建売住宅の購入者(買主)が自らの意思で、且つ原則的には自らの費用負担で利用する第三者検査です。
前述した住宅瑕疵保険の検査や建築基準法に基づく中間検査・完了検査なども基本的には第三者検査ではあるのですが、施工品質をチェックするかどうかという点において大きな違いがあります。
ここで説明している施主や購入者が依頼する住宅検査の主な利用目的は、消費者が依頼した者が施工品質をチェックしたり、その検査が建築会社への抑止力を発揮したりすることで、欠陥工事や施工ミスのトラブルをできる限り回避しようとするものです。住宅瑕疵保険などとは目的が異なることを理解しておく必要があるでしょう。
但し、経験や能力が重視される業務ですから、依頼するときには、検査実績が豊富で且つ建築士資格を持つ人が担当者となる会社を選びましょう。

5建築会社や不動産会社の担当者の多くは検査の実態を正しく理解していない

ここで紹介したことは、建築会社や不動産会社の担当者から、住宅瑕疵保険や住宅性能表示などの検査があるから安心だと説明を受けた人にとっては、少し驚く内容であったかもしれません。建築会社等の担当者たちは嘘をついているのでしょうか?
実は、業界の人たちの多くは騙そうとして言っているわけではありません。それぞれの検査における詳細な内容を知らずに誤解していることが多いのです。
2-1.工事監理者による監理」のところで、「工事監理を期待しやすいのは、建築士に対して施主が設計と工事監理を直接に委託しているケース」だとお伝えしましたが、この工事監理をきちんと遂行している建築士の多くは、住宅瑕疵保険などのためにくる検査(つまり、「3.制度等に基づく検査」に分類した検査)のように現場で10~20分程度だけチェックして帰るもので、施工品質を確認できないことはよくわかっています。
しかし、営業担当者の多くはこのことを知りませんし、現場監督も経験が長い人で丁寧に仕事をしてきた人でないと知らない人が多いです。騙そうとしているというよりも、知らずに説明していることが多いのが実情なのです。

6実態をどう考えるかは自分次第

ここで住宅業界における様々な検査の実態が理解できれば、対応をどうするかは個々の考え方次第です。求める品質レベルは人によって異なりますし、建築会社のレベルも異なります(下請け業者も含めて)。安心・安全にはコストがかかるものですが、それを負担すべきかどうか検討するとよいでしょう。
本来は建築会社が自らきちんと社内検査などで対応すべきことですから、それを期待できる会社で家を建ててもらうのが最もよいかもしれません。

荒井 康矩 このコラムの執筆者
荒井 康矩(アライ ヤスノリ)
2003年より住宅検査・診断(ホームインスペクション)、内覧会同行、住宅購入相談サービスを大阪で開始し、その後に全国展開。(株)アネストブレーントラストの代表者。

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