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第9回 付帯サービスに関するトラブル事例

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お得感のある付帯サービスだけど

不動産は非常に大きな金額の買い物であり、それゆえに契約の際には事業者が「〇〇もサービスしておきます」として住宅に関する設備を無料で提供してくれることもあります。

しかし、このサービスがトラブルの元になってしまうこともあります。今回紹介するADR事例は、事業者が顧客サービスとして行った水道管引込工事がトラブルになった事例です。

水道管の口径がトラブルの元に

賃貸併用住宅用の土地を購入したA氏。購入した土地は上下水道の整備がなされていなかったため、売主である不動産会社B社がサービスとして水道管引込工事を行うことになりました。

しかし工事後、水道管の口径が一般的な戸建て住宅用の20㎜であったことが分かりました。これを受けてA氏は、賃貸住宅用として推奨している水道管口径が25㎜のものに変更したいと考えました。

さらに、B社の対応に不満をもっており(工事前から水道管引込工事について幾度となく問合せをしていたが何の返答もなく、工事後に完了の報告だけがあった)、ADRの申立てを行いました。

すれ違う互いの主張

A氏の希望は、①口径25㎜の水道管に交換して欲しい、②精神的な苦痛を味わったので謝罪をして欲しいというものでした。

このA氏の主張を日本不動産仲裁機構ADRセンターがB社に伝えたところ、B社は「話合いでできるだけ解決したい」とこれを了承。申立人、被申立人、調停人が顔を合わせることなく、調停人が両当事者から電話で話を聞きながら調停を進めていく「電話調停」の形式にてADRが実施されることになりました。

A氏の見解は先に書いた通りですが、これを受けてB社の見解は、①建てる物件によって水道管の口径は変わり、上物メーカーによっては20㎜でも良い場合がある、②水道管を変更する場合は、買主負担と重説に書いているため、費用の全額負担はできない、③水道管引込工事はサービスとしてやっているので、こちらにのみ非があるとのA氏の姿勢は心外であり、謝罪はできない、というものでした。

話合いで見いだせた妥協点

調停人が間に入った話合いでは負担金の割合が主なテーマとなりましたが、結果としてB社は工事費用の半額強である100万円を負担することになりました。

また、B社はA氏に対し「SNSにおいてこのトラブルについて発信しない」など、外部への情報漏洩を禁ずる旨を希望し、A氏はこれを了承。互いの妥協点が見出せたため、和解となりました。

次回は、マイホーム建築に関するトラブル事例②を紹介します。

平柳 将人 このコラムの執筆者
平柳 将人(ヒラヤナギ マサト)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。

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