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第8回 重要事項説明に関するトラブル事例

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マイホームを購入する際、非常に大切な「重要事項説明」

重要事項説明とは、売買契約や貸借契約、委託契約の際に重要事項説明書に基づき、契約に関する重要事項を消費者に対し説明することです。

宅地建物の取引の他、保険の販売やマンションの委託契約、建築設計契約などにおいて重要事項説明があります。消費者にとっては、「契約を締結するか否かを最終的に判断するためのもの」という位置づけもあり、人生最大の買い物であるマイホーム購入時における重要性は言うまでもないでしょう。

やはり、トラブルになりやすい「重要事項」に関すること

マイホーム購入をめぐるトラブルでは、物件そのものや契約内容について「そんなことは聞いてない、はじめて聞いた」「知っていたら購入しなかった」と消費者が主張するケースが少なからずあります。

この「聞いてない」の多くが重要事項の説明に関係するものであり、「本当に聞いてない」という場合もあれば「聞いたけど忘れた」、「聞いたかもしれないけど良く理解できなかった」など様々なものがあります。そして、このような「聞いてなかった」ということをできるだけ防ぐために、宅地建物取引士(以下「宅建士」といいます)は「重要事項説明書」の内容を説明し、消費者は「確かに重要事項の説明を聞いた」という意味で重要事項説明書に記名押印をするのです。

重要事項説明を実施する宅建士は責任ある立場だが…

重要事項説明を実施する宅建士は、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実に宅地建物取引業法に定める事務を行わなければなりません。

しかし、不動産取引のプロとしてはあってはならないことですが、業務上の落とし穴として「これくらい、大した問題にはならないだろう」「よく分からないけれど、まあいいだろう」という甘い認識で重要事項説明を実施してしまい、これが大きなトラブルを招くこともあります。したがって、消費者としても、重要事項説明を受けても良くわからない点や確認しておきたい事項などがあれば、決して「なあなあ」にはせず、明確にすべく宅建士や事業者に確認をする必要があります。

宅建士が招いた重要事項説明に関するトラブル事例

買主A氏は、売主業者B社から中古のマンションを1,600万円で買い受けました。なお、重要事項説明書の「管理に関する事項及び計画修繕積立金に関する事項」には、「滞納金については買主の負担とする」と記載されていましたが、その金額については記載されておらず、説明もありませんでした。A氏が入居をしようとしたところ、管理会社から「まだ滞納金の60万円が支払われていない」ということを知らされたため、A氏は「そのような話は聞いていなかった」としてB社と重要事項説明を担当したC氏(B社所属)を相手としてADRによるトラブル解決を試みました。

話合いの場においてC氏に事情を聴いたところ、「滞納があるのは認識していたが、正確な額は調査していなかった。大した額ではないと思い、説明をしなくても良いと思った」とのことでした。結果的にB社はその否を認め、滞納分をA氏に支払うことになり、和解が成立しました。

次回は、マイホーム建築に関するトラブル事例②を紹介します。

平柳 将人 このコラムの執筆者
平柳 将人(ヒラヤナギ マサト)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。

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