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第25回 外壁塗装が引き起こしたシックハウストラブル

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賃貸物件にとって重要な外壁塗装ですが…

賃貸物件において、マンションの外壁塗装は入居者満足度や入居率にも影響する重要な物件メンテナンス事項となります。賃貸管理を行っている愛知県の不動産会社H社は、外壁塗装を業務で多く実施しており、トラブルも経験してきました。


H社が経験した外壁塗装トラブルを類型化すると、次にようになります。

1.工事に関するトラブル
2.仕上がり後のトラブル
3.入居者や近隣住民とのトラブル

1.に関しては「入居者の自転車等の所有物への塗料の飛び散り」や「塗装工事の遅延による機会損失」等があります。また、2.に関しては「剥がれや色あせ」や「塗りムラや塗り忘れ」、「サビの発生」等があります。この1.と2.については、入居率に直結してしまうトラブルであるといえるでしょう。また、3.に関しては「騒音への苦情」や「塗料の臭いに対する苦情」があります。

シックハウストラブル解決事例

代表者がADRの調停人候補者であるH社は、紹介によってオーナーから外壁塗装に関するトラブルの相談をされることもあります。ここではその事例を紹介します。

あるとき、賃貸マンションオーナーのA氏の所有する物件で外壁塗装工事を行っていたところ、入居者のB氏より、「塗料の臭いによって体調が悪くなっているので、工事をすみやかに中止して欲しい」と連絡がありました。B氏はもともとアレルギー体質であり、医師の診断ではシックハウス症候群の疑いがあるとのこと。しかし、塗装工事は半分ほど終了しており、この段階で中止するというのも考えにくいものでした。しかし、当然のことながら、B氏の体調にも気を配らなければならないところが悩ましい点でした。

ここでH社は、賃貸オーナーA氏に話合いの場を設けることを提案し、入居者B氏もこれに同意しました。話合いの場においてH氏が行ったのは、B氏のライフスタイルをしっかりとヒアリングするということでした。特に知りたかったのは「どこに勤めているのか」ということ。勤め先によっては、A氏の所有している他の物件に、工事の期間中は移ってもらおうと考えたのです。ヒアリングの結果、B氏はA氏の所有する物件の近隣に勤めていることが分かり、B氏も住まいを移ることを快諾してくれました。

この事例でうまくトラブルが解決したのは、H社が「話合いによって解決の方法を探ろう」と考えていたからです。このスムーズなトラブル解決に、A氏はH社に対する信頼を感じ、以後、賃貸管理に関するコンサルティング等を依頼するようになりました。

平柳 将人 このコラムの執筆者
平柳 将人(ヒラヤナギ マサト)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。

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