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第22回 契約不適合責任に関するトラブル事例

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「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ

2020年4月より改正が施行され、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと変わりました。内容面では、例えば、瑕疵担保責任では「隠れた瑕疵」があることが要件であったのに対し、契約不適合責任では、隠れた瑕疵であるかは関係なく「契約内容に適合していないこと」が要件となりました。

なお、契約不適合責任に関するトラブルは、不動産売買に関するトラブルとして主なものとなっており、例えば、雨漏りやシロアリ、地中埋設物の存在や土壌汚染等、契約内容とされた品質・性能を備えていない不動産が引き渡された場合に問題となります。

契約不適合責任に関するトラブル事例

中古物件購入後、ベランダ部分に瑕疵が発覚したが…

埼玉県内の築18年の戸建住宅を購入したA氏。購入から半年後、ベランダ表面部分に劣化が見られたため、防水のリフォームを業者に依頼したところ、ベランダ内部の腐食の可能性を指摘されました。調査をしたところ、内部が腐っていたため、売主B氏に瑕疵ではないかと確認したところ、取り合ってはくれないという状況。困り果てたA氏は、B氏を被申立人とするADRによってこのトラブルを解決することを選択しました。

平行線を辿る話し合い

A氏の希望は、ベランダの修繕費用の約100万円を、説明の不備あるいは契約不適合責任を理由として、B氏に負担して欲しいということ。一方B氏は、説明に不備はなく、そもそも現状有姿での引き渡し契約のため、契約不適合責任は負わないという認識を持っており、互いの主張は平行線を辿っていました。その後、調停人を交えた話し合いの中で、第三者による現地調査をしようということになったため、調停人が住宅検査の専門家である一級建築士を帯同し、A氏、B氏とともに現地調査が行われました。

現地調査を経て和解へ

現地調査では、ベランダの腐食状態が極めて悪いと共にその危険性も認められ、A氏、B氏共にその早期の解決の必要性を認識。修繕業者の選定や負担割合に関する話し合いを続けた上で、結果、A氏が2割、B氏が8割の費用を負担するという内容で和解となりました。トラブル解決のポイントは、顔を突き合わせた、表情の見える話し合いによって、売主が買主の不安感を感じとり、その心情に共感したことによるでしょう。

平柳 将人 このコラムの執筆者
平柳 将人(ヒラヤナギ マサト)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。

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