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第18回 借主と家賃保証会社間でのトラブル事例

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コロナ禍によって家賃保証サービス会社が倒産

2020年7月16日、家賃保証サービス会社では初の新型コロナウィルス関連倒産が発生しました。家賃滞納が増加してしまい、保証債務の履行が増加してしまったことによるものです。

不動産業界ではショッキングなニュースであり、当然、他の保証会社においてもコロナ禍によって保証債務の履行の増加が生じていると考えられ、同様の倒産の可能性も危惧されます。もちろん、賃貸管理会社や賃貸オーナー、入居者は、この動向を注視する必要性があるでしょう。

家賃保証に関するトラブルのパターン

なお、家賃保証に関するトラブルは今までも発生しており、その種類としては、主に①貸主と家賃保証会社間、②借主と家賃保証会社間、に大別することができます。

①については、家賃保証会社の倒産に起因するもので、貸主が家賃保証会社から家賃を回収することができなくなるという事例があります。

また、②の借主と家賃保証会社間のトラブルに関しては、「家賃滞納をしたら家賃保証会社に鍵の付け替えをされて部屋に入ることができなくなってしまった」といった事例や「家賃保証会社から深夜早朝に滞納家賃の取り立てを受けた」等、家賃滞納に関するものが主になっています。そして、家賃保証会社の中には強引な取り立てを行う事業者もあり、そのような場合は入居者が訴えを起こすケースもあります。

借主と家賃保証会社間のトラブル事例

ここでは、家賃保証会社からの強引な取り立てに関する相談を受け、このトラブルを解決した愛知県の不動産会社D社(ADR調停人候補者在籍)の事例を紹介します。D社が仲介した物件に入居していたA氏は、3か月間の家賃滞納をしてしまい、そのことによって部屋に置いてあった持ち物を家賃保証会社に処分されてしまいました。さらに「来月も支払いがなければ、鍵を付け替えて入室できないようにする」と忠告されました。

「確かに家賃滞納をしてしまった自分自身に非はあるのだが、無断で私財を処分することはやりすぎでないか」とA氏はD社に相談をしました。D社がA氏に今後の滞納家賃の支払計画を確認したところ、そのビジョンは計画的であるように思えたため、間に入って両者の対話を促進し、トラブルの解決を試みることにしました。

話し合いを経て分かったことは、とにかくコミュニケーション不足であったということです。家賃保証会社はメールにての督促に終始し、A氏もメールを見て見ぬふりをしていたため、この話し合いが両者の初めての対話となりました。話し合いによって、家賃督促会社はA氏の経済状況は思ったほど悪くはなく、返済のビジョンがあることが分かり、A氏も自身の滞納が大事になっていたことが分かったのです。結果、A氏が返済計画の提出とその履行を約束し、家賃保証会社も処分してしまったA氏の私財を弁償するということで、このトラブルは解決しました。

平柳 将人 このコラムの執筆者
平柳 将人(ヒラヤナギ マサト)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。

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