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第16回 空き家に関するトラブル事例

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空き家率は13.6%を記録

「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、全国の空き家の数は848万9千戸、空き家率は13.6%となり、前回の調査(平成25年)と比較して、3.6%の増加で過去最高を記録しました。

空き家がトラブルのもとに

空き家は単純に人が住んでいない建物ということになりますが、それだけで様々なトラブルを発生させます。その中の一つが、建物の老朽化です。住む人が居なくなり、長期間放置している空き家は、当然、ただただ老朽化していくことになります。

日常的に風雨にさらされ、時には地震や台風などの天災に見舞われ、結果的にブロック塀が崩れたり屋根瓦が散乱してしまったりと、周囲に被害を加える可能性が出てきてしまうのです。もちろん、放火や防犯上のリスクもあるでしょう。

ブロック塀が倒壊する前に、なんとかしたい

A氏の住まいの隣には、5年程前から空き家になった建物がありました。建物の庭は雑草が生い茂り、屋根瓦は剥がれ落ちており、さらにはブロック塀が今にも崩れ落ちそうになっていました。そのような折、A氏が住む地域とは別の場所で比較的規模の大きな地震が発生しました。そして、地震によってブロック塀が崩れ、たまたま通りがかった小学生の子供が怪我をしたというニュースがありました。

そのニュースを見たA氏は、この事故は自分においても起こり得ることだと感じ、早急に対策をとらなければと思い、近隣の不動産会社に相談をしました。A氏は、空き家の所有者に連絡を取り、裁判等をしてでも空き家を取り壊す等の対処をして欲しいと考えていましたが、実際にはまだ実質的な被害はこの空き家から被っておらず、A氏の危機感だけで要求を通すことができるのかを不安に感じていました。

そこで、不動産会社は話合いによるトラブル解決を提案。これであれば、A氏の危機感と心配を空き家の所有者に話すことで、これに共感してもらい、空き家の対処をしてくれるかもしれないと考えたのです。

話し合いで心情理解を促す

話合いによるトラブル解決をA氏が了承したため、不動産会社は空き家の所有者を調べ、連絡を取り、話合いを実施。

空き家の所有者はA氏が自身の所有する空き家によって多大な心労を抱えてしまっていたことを申し訳なく思うと共に、実際に近隣住民に及ぼしてしまうリスクを認識。A氏に空き家の対処をすることを約束しました。

このトラブルは、不動産会社が話合いの機会をつくり、心情の理解を促したことが解決に至ったポイントであるといえるでしょう。

平柳 将人 このコラムの執筆者
平柳 将人(ヒラヤナギ マサト)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。

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