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第4回 工事見積もりの取り方

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注先の建築会社の候補を絞った後は、詳細な見積り金額を提示してもらう段階です。建築会社を比較検討するときに、見積書の質を確認すべきなのですが、ここでは具体的な見積書のチェックポイントと相見積もりについて説明します。

1相見積もりが基本

家づくりでは、1000万円を超える大きな資金を投じるわけですから、相見積もりを取ることは当然のことでしょう。ただ、やみくもに相見積もりをとればよいというわけではありませんので、ここで紹介していることは理解しておきたいものです。

1-1.3社以上で相見積もりをとる

相見積もりは、最低でも3社から取るようにした方がよいでしょう。相見積もりの目的としては、競合させることで値下げしてもらう、価格の比較、見積書の質の比較といったことが挙げられます。これらの効果をより多く得るためには2社だけでは少なすぎるでしょう。

4~5社ぐらいまでなら、何も非常識なことはありませんから、複数の建築会社・ハウスメーカーに見積りを依頼するとよいでしょう。

このときに、見積りを提示してもらってからでは断りづらいからと相見積もりをしない人がいますが、それでは建築会社のペースで話を進められてしまいますし、割高な金額で発注してしまう可能性が高まります。数万円、数十万円の買い物でも相見積もりは当然のようにされることですから、遠慮しすぎないことが大事です。

1-2.概ね同じ工事内容で見積りを比較する

相見積もりの目的に、価格の比較や見積書の質の比較があることは既に述べた通りです。そのためには、各社に対して同じ工事内容、仕様にて見積書を提示してもらう必要があります。極端な話ですが、全く異なる工事内容の見積書を各社から提示されても、比較する術がないでしょう。

ハウスメーカーによっては、他社にはない工法、商品などを使用することも多いですから、全く同じ項目で見積りを取ることは不可能ですが、ある程度、グレードを合わせるなどの工夫をして、見積りを依頼しましょう。

1-3.発注先の方向性は絞っておく

建築会社によって、建築費の価格帯に大きな差があることは「建築会社の選び方(1)タイプ別に見る家を建てる会社」でも述べた通りです。高価格帯の建築会社と低価格帯の建築会社から、詳細な見積りをとって比較することにはあまり意味がありません。

高価格帯にするか、低価格帯にするか、若しくは別の方向性であるのかといった基本的な方向性は絞ったうえで、3社以上の見積りをとって比較するべきでしょう。

2見積書のチェックポイント

各社から見積書を入手した後は、その内容を細かくチェックしていく作業が必要です。見慣れない新築工事の見積書ですが、時間をかけてでもじっくりチェックするように心掛けてください。

2-1.発注内容と見積書の照合

見積書を入手してから最初にチェックすべきことは、希望する工事内容、仕様が見積書に反映されているかどうかです。見積書を基に請負契約をすることになるため、希望内容が反映されていない場合、後から建築会社との間でトラブルになることも多いです。

3社以上の見積書をチェックする作業は簡単ではないですが、しっかり確認し、漏れがあるようであれば建築会社に確認しなければなりません。見積書に記載された項目の意味が分からない場合は、担当者に質問しましょう。こういった質問に丁寧に回答してもらえるかどうかも、建築会社選びの1つの基準になります。

2-2.予備費の有無

請負工事を締結し着工してから、何か不測の事態に対して費用がかかることもあれば、何らかの理由により追加や変更工事を依頼することもあります。その際に、対策費用や工事費用が追加になることもありますが、そういった費用への備えも考えておかなければなりません。

見積書を見たときに、建築会社によっては予備費などの名目で費用を計上していることがあります。リノベーション工事の時には、予備費の発生率が新築よりも高いために見積りに記載していることも多いですが、新築のときにも記載していることがあります。

予備費は最終的には使わないということも多いのですが、万一の備えとして予算に入れておいた方が無難です。

複数業者の見積書を比較するときには、予備費を見積もっている会社の方がその分、高くなりがちですから、予備費のある見積書かどうかも確認した上で全体の金額を比較検討しなければなりません。

2-3.一式表示に要注意

見積書をよく見ると、単位という欄があるはずです。壁クロスならば「㎡(平方メートル)」、柱であれば「本」、合板なら「枚」などといった単位です。そして、その横に数量が載せられており、どの部材がどれだけ使用されるのか明確になっているはずです。

しかし、質の低い見積書では、一式表示としている項目が非常に多く、何がどれだけ使用されて、その金額になるのか不明瞭です。

これは建築会社が悪意でしている可能性もありますが、多くの場合は丼勘定、つまり見積り作成の手抜きです。この手抜きによって、後から施主と建築会社が揉めることは非常に多いため、施主としては一式表示の多い見積書を提示する建築会社は避けておいた方が無難です。

2-4.メーカー名と商品名

多くの見積書を見ていると、具体性に欠けるものが非常に多いものです。たとえば、キッチンやトイレなどの商品について商品名や商品番号、さらにはメーカー名も記載されていないことがあります。

詳細な見積りを提示してもらう段階で、仮に商品が決定していない場合であっても、どの程度のグレードのものをいくらで提供するものか確認するためにも、その時点で希望に近い商品で見積りを提示してもらうべきです。但し、建築会社によっては取り扱うメーカーによって値引き率の違いもあることから、その点について説明を受けておきましょう。建築会社の方から「○○○○の商品ならお安くできます」と説明してくることもあるでしょう。

2-5.金額欄が万単位は怪しい

見積書には金額欄があります。各項目について、数量と単位を示し、その結果の金額を示す欄です。数量・単位が一式表示になっているケースで見られることがあるのですが、多くの項目において金額がきっちり万単位になっていることがあります。

見た目はきれいで見やすいかもしれませんが、きちんと計算せず、丼勘定である証のようなものです。丼勘定の建築会社と契約してしまうとトラブル遭遇率が高いですから、要注意です。

2-6.支払時期

建築請負代金の支払い時期の確認も重要です。最終的には、請負契約書に署名・押印する前に確認すべきことですが、見積もり段階でも確認しておきましょう。

会社によって相違があり、手付金以外の全額を完成後の引渡し時に支払うケースもあれば、中間金を1~3度にわけて支払うこともあります。施主としては、手付金以外の請負代金については完成後の引渡し時に支払う条件が望ましいですから、見積書の提示前後で確認しておきましょう。

荒井 康矩 このコラムの執筆者
荒井 康矩(アライ ヤスノリ)
2003年より住宅検査・診断(ホームインスペクション)、内覧会同行、住宅購入相談サービスを大阪で開始し、その後に全国展開。(株)アネストブレーントラストの代表者。

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