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第21回 中古住宅購入後の引渡し時の流れと注意点

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回までのコラムでは、中古住宅を購入する流れや内見時の注意点を紹介しました。本来ならば、購入申し込みや売買契約、諸費用、ホームインスペクションのことなどを解説するところなのですが、以前に紹介した建売住宅のそれらと内容が重なるため、これらについては建売住宅のコラム(以下)を参考にしてください。

第13回 建売住宅の購入申込と申込時の注意点
第14回 建売住宅の契約時に支払う手付金の基礎知識と注意点
第15回 建売住宅の売買契約に関する注意点と主なチェックポイント
第16回 建売住宅の購入時に必要な諸費用
第17回 建売住宅購入時のホームインスペクション(住宅診断)の基礎知識

ただ、購入後の引渡しに関しては中古住宅と建売住宅で異なる点が多いですから、ここで中古住宅の引渡し時の流れや注意点を紹介します。

前回のコラム「中古住宅を購入する流れ」のなかで、物件探しの前から引渡しを受けるまでの流れを大雑把に解説しましたが、売買契約を締結した後、引渡しを受けて入居するまでの流れについても相談を受けることが多いです。はじめてのことばかりですから無理もありません。

売買契約から引渡し、入居までの流れを細かく書くと以下のようになります。

  1. 売買契約の締結(同時に手付金を支払う)
  2. 住宅ローンの申し込みと承認
  3. 引渡し日の調整と引渡し準備
  4. 現地確認(境界位置・建物の状況等)
  5. 住宅ローンの金銭消費貸借契約の締結
  6. 融資実行・決済・引渡し・登記申請
  7. 入居前の現地確認(付帯設備・建物の状態等)
  8. 入居(引越し)
  9. 登記完了

これを見ると引渡しの前後はやることが多いですね。売買契約をしても終わりではなく、むしろ住宅購入の始まりのようでもあります。これらについて以下でもう少し詳しく説明します。

1売買契約の締結(同時に手付金を支払う)

売主と買主の売買契約ですが、このときに手付金を支払います。また、売買契約の前に重要事項の説明が書面提示の上でなされます。この際、住宅ローンの申し込み時に必要な書類の準備をしておくよう求められることもありますから、事前に不動産会社に持参資料について確認しておきましょう。

2住宅ローンの申し込みと承認

住宅ローンを利用する人は、その申し込み手続きをしなければなりませんが、売買契約の締結後、速やかに行う必要があります。売買契約のなかで、「速やかに」と記述していることもありますし、具体的に日付を取り決めていることもあります。

申し込み後、1週間から2週間くらいで住宅ローンの承認(融資の承認)が下りることが多いですが、時期・内容によっても異なります。金融機関に申込する前に確認しておくとよいでしょう。

売買契約の中で、融資の承認を受けなければならない期日が定められていますから、時期に遅れないように手続きしてください。

住宅ローンは1つの金融機関にしか申込みできないわけではありませんから、迷っている場合や承認を得られるかどうかわからない場合には、複数の金融機関に申し込みしても構いません。融資承認を複数の金融機関から得られたときは好きな方を選択すればよいのです

3引渡し日の調整と引渡し準備

融資の承認を得た直後(状況によっては承認の前)に、売主と買主の間で引渡し日を調整して決めます。売買契約書において引渡し日を明記していることがありますが、多くの場合、ゆとりを見て先の日にしているため、お互いの合意によって前倒しすることは多いです。

同時に引渡し準備をします。準備とは、諸費用や決済金額の確認、決済時の必要書類の準備などです。登記申請に必要な書類の準備も司法書士の案内に基づいて対応することになります。一般的には不動産会社からこれらの準備について案内されるはずです。

4現地確認(境界位置・建物の状況等)

引渡しを行う前の大事な作業があります。それは、現地確認です。購入する物件と隣地との境界位置の確認をするのはこの時期です。売買契約書でも境界位置の確認をすることが明記されています(買主から言わないとこれを飛ばしてしまう不動産会社も多いです)。

また、売買契約から引渡し前の期間が長い場合(1カ月程度を超える場合)、建物の状態に変化がないことを確認することも大事です。売買契約前の内見時に確認したときにはなかった雨漏りの痕などが見つかることもありますから、現地確認は怠らないでください。

内見時には家具などが多くて見られなかった箇所でも、引渡しの直前になれば家具等が撤去されていて見ることができるはずです。このときに、瑕疵(雨漏りなど)が見つかれば補修対応について売主と協議する必要性が生じることがあります。

5住宅ローンの金銭消費貸借契約の締結

住宅ローン(融資)の承認を得た後、引渡しまでの間には、買主(=借主)と金融機関の間で金銭消費貸借契約を締結します。つまり、住宅購入のための資金を借りるための契約を結ぶということです。

この契約を融資実行するのと同日にすることもありますが、前もってしておくことが多いです。融資を受ける金融機関を訪れてすることになるでしょう。

6融資実行・決済・引渡し・登記申請

ここまできて、遂に引渡し・決済です。金融機関から住宅ローンの融資実行をしてもらってそのまま買主へ支払い、融資金以外の残金も同時に支払うことになります。そして、売主から買主へ鍵が引渡されて、実際の所有権が買主へ移転されます。

司法書士が所有権移転や抵当権(住宅ローンの担保権)の設定登記について申請するのもこの日です。但し、所有権はこの時点で買主へ移転するものの、登記完了には数日を要します。

また、このとき、対象物件に関する資料(設計図書など)については全て引き継いでおきましょう。売主が設計図書を持っていても引き継がれないことがよくありますが、将来のリフォーム時には必要となることが多いですから注意してください。

住宅ローンは1つの金融機関にしか申込みできないわけではありませんから、迷っている場合や承認を得られるかどうかわからない場合には、複数の金融機関に申し込みしても構いません。融資承認を複数の金融機関から得られたときは好きな方を選択すればよいのです

7入居前の現地確認(付帯設備・建物の状態等)

所有権が買主へ移転されれば、買主はいつでも自由にその住宅に立ち入ることができます。入居する前の空家の状態で現地確認して、コンロ・給湯器などの付帯設備が契約通りであるか確認し、建物の状態に変化がないかも確認しておきましょう。

もし、売買契約の前にホームインスペクション(住宅診断)を利用していないならば、このタイミングで利用しておくとよいでしょう。入居してからでは家具などがあるために、隠れて見えない箇所が増えるからです。

8入居(引越し)

入居に関しては特に説明することはないですね。引渡し日の翌日に引越し日を予定していると何らかの都合で引渡しが遅れたときに対応困難になりますから、できれば1週間程度はゆとりを見ておくことをお奨めします。

9登記完了

「6.融資実行・決済・引渡し・登記申請」にも書いたように、所有権移転などの登記が完了するのは登記申請から数日後のことです。司法書士または不動産会社に登記完了後の登記事項証明書を取得しておいてもらい、登記が完了していることを確認しておきましょう。

以上が中古住宅の売買契約を締結してから登記完了までの流れです。よく理解しておいてください。

荒井 康矩 このコラムの執筆者
荒井 康矩(アライ ヤスノリ)
2003年より住宅検査・診断(ホームインスペクション)、内覧会同行、住宅購入相談サービスを大阪で開始し、その後に全国展開。(株)アネストブレーントラストの代表者。

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