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第15回 建売住宅の売買契約に関する注意点と主なチェックポイント

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売住宅を購入する流れに沿って注意点や必要な基礎知識について書いてきましたが、いよいよ売買契約についてお伝えします。売買契約を締結した後は、買主から解約すると手付放棄や違約金が生じる可能性が高いため、なかなか後戻りできるものではありません。売買契約を締結する前に、ここで必要な基礎知識を付けておきましょう。売買契約の締結時には手付金を支払うことになりますが、これについては前回のコラム(建売住宅の契約時に支払う手付金の基礎知識と注意点)を参考にしてください。

1重要事項説明と売買契約

建売住宅に限らず不動産の売買を行う際は、売買契約の前に対象物件の大事な事項について不動産会社から説明しなければならないこととされており、これを重要事項説明と言います。これは書面化することが義務付けられており、その書面のことを重要事項説明書と言います。

建売住宅の売買であれば、不動産仲介業者がこの重要事項説明書を作成したうえで買主に説明を行います。仲介業者を介さない取引、つまり売主である不動産会社が買主へ直接販売するケースでは売主が作成して説明を行います。

重要事項説明は売買契約より前に実施しなければならないのですが、売買契約を行う当日の契約直前に実施されるケースが非常に多いです。契約の前日までに実施することもありますが、まだまだ少ないようです。

買主としては、対象物件の重要事項について説明を受けた内容で心配なこと、確認したいこと、調べたいこと等が生じる可能性もあることから、契約日よりも前の日までに実施してもらう方がメリットはあるのですが、そういった取引の進め方をする不動産会社は少数派です。

ちなみに、重要事項説明書に買主がサインしたとしても、それだけでは売買契約は成立しておりません。その後の売買契約書に売主と買主が互いにサインした時点で成立するものです。

2売買契約書チェックの基本知識

重要事項説明書と売買契約書の違いがわかりましたら、次は売買契約書をチェックする上での基礎知識をお伝えします。

2-1.事前に売買契約書と受領して内容を確認する

売買契約書をチェックする上で最初に理解しておくべきことは、買主から要求さえすれば売買契約書を事前に入手して読んでおくことができるということです。事前とは売買契約日よりも前の日までのことです。もちろん、重要事項説明書も同様です。

「買主から要求さえすれば」と記述しましたが、要求しなければほぼ全ての取引において、不動産会社から事前に売買契約書を買主に見せようとはしてもらえません。

不動産の取引に慣れていない買主が、売買契約の席で初めて売買契約書を見てもその全てを理解することは不可能です。ましてや、大事なポイントをゆっくりチェックしていく時間と気持ちのゆとりなどありません。不動産会社から説明を受けることはできるはずですが、初めての契約の席できちんと理解できるか、買主の一方的なリスクになることではないかといったことを判断するのは非常に難しいでしょう。

必ず、契約日よりも前の日までに重要事項説明書と売買契約書を提出してもらって内容を確認するようにしましょう。

もし、事前にこれらを見せることを拒否するような不動産会社であれば、そのまま取引を進めるべきかどうか慎重に判断すべきでしょう。もちろん、お奨めできない業者だと言えます。

2-2.わからないことは遠慮せず質問する

もう1つ基礎的なことをお伝えします。住宅売買の相談を多数受けているなかで、不動産会社に対して必要以上に遠慮する人は意外と多いです。遠慮する内容もいろいろあるのですが、そもそもリスクを背負って大きな買い物をするわけですから、遠慮しすぎることは禁物です。

売買契約書を事前に請求して見せてもらったのはよいのですが、見てわからないことが多いため、質問すべきことも多く、それらを不動産会社に全て教えてもらうのは申し訳ないと遠慮する人がいます。

不動産会社の役割の1つに、買主に対してきちんと説明して理解してもらって取引してもらうということがありますから、わからないことを聞くのは当然のことであり、不動産取引においてわからないことが多いのもまた当然のことです。遠慮せずにわからないことは理解できるまで質問するようにしましょう。

3売買契約書で見るべき最低限のチェックポイント

それでは、売買契約書の記載内容のなかで具体的にチェックすべきポイントを解説します。

3-1.チェックポイント(1)本来は全ての記述が大事

売買契約書でチェックすべきポイントと言っても本来はいくつかの項目に絞るべきではありません。記載されていることはいずれも大事なことですから、不明点・疑問点は不動産会社に質問して理解するように心掛けてください。

チェックすべきは記載内容の全てであるということをよく理解してください。その上で、建売住宅の売買契約書についてトラブルに関係することが多い点を以降で解説します。

3-2.チェックポイント(2)手付金・売買代金・残代金と支払い時期

売買契約書には、必ず手付金・売買代金(総額)が記述されています。売買代金は価格交渉したうえで合意した金額となっているか確認してください。手付金も売主と買主の間で合意した金額となっているか確認してください。

手付金の金額の決定については、「建売住宅の契約時に支払う手付金の基礎知識と注意点」を参考にするとよいでしょう。

売買代金から手付金を差し引いた額が残代金として支払う金額となります。この金額が間違っていないかも確認しなければなりませんが、稀に中間金の支払いがあるときもあります。

たとえば、対象の建売住宅がまだ建築中であり、工事の進捗に応じて中間金の支払いを求めるケースです。最近の建売住宅の売買において中間金を求めることは少ないですが、中間金を支払った後に売主が倒産するなどすれば支払った金額が返金されない等のリスクが生じますから、できれば中間金のない契約内容とするよう交渉した方がよいでしょう。

また、残代金の支払い時期もよく確認してください。一般的には対象物件を引渡しときに残代金を支払うものですが、支払いが引渡し日よりも先だとする契約になっていることが稀にあります。支払っても引渡してもらえないというのは、買主にとって不利ですから要注意です。

3-3.チェックポイント(3)引渡し時期と完成時期

引渡し時期は、上で記述したように残代金の支払いと同時であることです。そして、その時期が買主の希望する期間であるかどうか確認してください。口頭で説明を受けていた日よりも、かなり先の日程となっている契約書にサインして、更に実際に口約束を守ってくれなかったという人が旧居の退去問題で困っていたケースがあります。

特に未完成物件を購入するときには、予定よりも工事が遅延してしまい引渡しが遅れることは多いですから、事前の説明から契約書の記載内容に変更がないかチェックすることは大事です。このとき、引渡し日だけではなく完成日も聞いていたとおりであるか一緒に確認しましょう。

3-4.チェックポイント(4)特記事項・備考欄に要注意

売買契約書の最初の方や最後のところに、特記事項、備考などの欄があることが一般的です。全ての取引にほぼ共通する条項は契約書のひな型に記載されているものの、個別の取引の事情によることなどは特記事項や備考欄に記述することが多いです。

そして、これらの欄には買主にとって不利な条件や事前に知らされていなかった取引や物件の問題点が小さな文字で書かれていることもありますから、熟読しなければなりません。隣地と土地の一部を共同利用することになっていたり、対象物件の目の前がゴミ置き場になっていたり、隣地からわずかな越境があったりと様々なことが記述されているものを見かけます。

資産価値を下げたり、隣地等とトラブルになったりすることがありますから、時間をかけてでもチェックすべきです。

実は売買契約書をチェックするときには、合わせて購入に必要な諸費用についてもチェックすべきです。売買契約書の内容ではなく、諸費用を誤魔化そうとする会社が少なくないからです。次回は、売買契約時にチェックすべき諸費用について解説します。
荒井 康矩 このコラムの執筆者
荒井 康矩(アライ ヤスノリ)
2003年より住宅検査・診断(ホームインスペクション)、内覧会同行、住宅購入相談サービスを大阪で開始し、その後に全国展開。(株)アネストブレーントラストの代表者。

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