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第14回 建売住宅の契約時に支払う手付金の基礎知識と注意点

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入を希望する建売住宅の取引条件(売買代金や引渡し時期など)について、売主と買主の間で合意できれば、いよいよ売買契約へと取引が進んでいきます。

売買契約を締結するときには手付金を支払うこともありますが、売買契約書に署名・押印することをイメージしたときに急にこのまま購入してもよいものだろうかと心配になる人も多いです。高額な不動産を購入することが決まる瞬間ですから、無理もありません。

手付金の支払いや売買契約の締結は、人生の一大イベントと言っても過言ではありませんから、ここで必要な知識を身につけておきましょう。

まずは、手付金について説明します。手付金のことを正確に理解してから売買契約について知ってください。

1手付金とは?

手付金にも種類があり、解約手付・違約手付・証約手付の3つがありますが、住宅の売買の際の手付金は基本的には解約手付と言われるものです。

解約手付とは、売買契約後に契約解除をするときに根拠となるもので、以下のように処理されます。

・買主が契約解除するとき : 手付金を放棄する
・売主が契約解除するとき : 手付金を返金した上で更に同額を支払う

売買契約には手付解除に関する条項が記載されているはずですから、それを見ると上の内容となっていることでしょう。後述する「4.自己都合の解約では返金されない」でもう少し詳しく説明します。

2手付金の支払い時期

手付金を支払う時期は、原則として売買契約と同時です。売買契約書を締結したその場で手付金を買主から売主へと支払うのです。しかし、手付金の金額が大きい場合、高額な現金を持ち歩くのは買主も怖いですね。売主も受領してから銀行などへ預けるまでに持ち運ぶのが怖いという人は多いでしょう。

また、週末に売買契約を締結することが多いですが、その場合、買主は金曜日に現金を準備して翌日以降まで持っておかなければなりません。

そういったことを考慮して、売買契約を締結する前日もしくは当日に確認できるよう事前に振込処理しておくこともあります。

但し、不動産会社によっては売買契約日の1週間前に振り込むよう買主へ要望することもありますから、注意してください。その1週間で買主の購入希望の気持ちが変化することもありますし、売主が倒産してしまうリスクもゼロではありません。当日の現金払いでないときはできる限り直前の振込としておく方がよいです。

3手付金の金額はいくらか

住宅購入者からよく質問を受けることの1つが、手付金の金額をいくらにすべきであるかという問題です。手付金の金額は、売主と買主が合意した金額とするのですが、知っておくべきことがあります。

3-1.未完成の建売住宅の場合

未完成の建売住宅の売買である場合、手付金を売買代金の5%以下で且つ1,000万円以下とすることが多いのですが、その理由はこの条件に該当しない金額とするならば、手付金等の保全措置を講じることが売主に課せられているからです。

仮に4,000万円の売買代金であれば、200万円(4,000万円×5%)がこの上限となります。この金額を超える手付金とするならば、手付金等の保全措置を講じなければならないため、売主にとっては面倒でもありますから、200万円以下で設定されることが一般的です。

3-2.完成済みの建売住宅の場合

完成済みの建売住宅の売買である場合は条件が少し異なり、手付金を売買代金の10%以下で且つ1,000万円以下としなければ保全措置が必要とされています。そのため、4,000万円の物件であれば400万円以下とすることが多いです。

ちなみに保全措置とは銀行等が保証するものですが、これを活用している取引はほとんどありません。

3-3.実際の手付金の金額は?

ただ、未完成物件なら5%、完成物件なら10%にするかといえば、実務上はそうでもないことが非常に多いです。たとえば、売買代金が4000万円であっても5,000万円であっても手付金を100万円としていることはよくあることです。

また、自己資金にゆとりのない買主である場合には、手付金を30万円程度にしていることもあります。いくらにするかは、売主とよく相談して決めてください。

ただ、支払う手付金が高すぎるとこの後の「4.自己都合の解約では返金されない」で説明する手付放棄による契約解除をしづらくなりますから、この点も考慮して決めるとよいでしょう。完成物件であっても売買代金の5%までとしてもよいのではないかと考えています。

4自己都合の解約では返金されない

最後に手付放棄による契約解除についても触れておきます。

4-1.手付放棄と倍返し

「1.手付金とは?」で記述したように、買主の都合で売買契約を解除する場合には、支払った手付金は返金してもらうことができません。手付放棄という言葉を聞いた人も多いと思いますが、このことです。仮に支払った手付金が100万円であれば、その100万円を放棄するということです。

売買契約を締結して手付金を支払った後は、自己都合で解約するとそれだけのペナルティを背負うということを理解しておきましょう。

逆に売主の都合で解約する場合は、手付金を買主へ返金した上でそれと同額を支払わなければなりません。これを手付の倍返しと呼んでいます。売主が受領していた手付金が100万円であれば、その100万円を含めて合計200万円を買主へ支払うということです。

つまり、手付金の金額が大きいほど売主も買主も解約する障壁が大きくなり、解約しづらくなるということです。売ることを目的に開発して販売されている建売住宅ですから、売主から解約を申し出ることはなかなかありません。

しかし、買主は契約後に転勤が決まったとか、両親の介護をすることになった等の事情により、解約せざるを得なくなる人もいますから、金額を決めるときはよく考えてください。

4-2.手付放棄による解除には期限がある

ここで注意しておきたいのは、手付放棄で契約解除できるのはいつまでなのかという点です。手付金を支払って契約したものの、気変わりしてどうしても解約したいと考える人もいます。毎年そういった人から相談を受けていますから、意外と起こりうることだとの実感があります。

手付金を放棄してでも解約したいと考えていたものの、それだけでは済まされずに売主から違約金まで請求されている事例もあるのです。違約金も売買契約によって定められるものであり、内容次第では確かに違約金を支払わねばならないこともあるため、いつでも手付放棄で解約できると誤解しないようにしましょう。

手付金のことについてよく理解できたでしょうか。必ず、売買契約を締結する前に理解しておき、手付金の金額や支払い時期に注意して契約を締結するようにしましょう。

荒井 康矩 このコラムの執筆者
荒井 康矩(アライ ヤスノリ)
2003年より住宅検査・診断(ホームインスペクション)、内覧会同行、住宅購入相談サービスを大阪で開始し、その後に全国展開。(株)アネストブレーントラストの代表者。

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