第33回 自然現象に関する太陽光発電トラブル事例


不動産に関するトラブルには、日照に関するトラブルや大雨での湿気から発生するカビによるトラブルなど、自然現象を理由として発生するものがあります。こうした自然現象に由来するトラブルの中には、野立てで設置する太陽光発電システムにおける、雑草に関するトラブルもあります。この太陽光発電と雑草に関するトラブルは、大きく分けて「太陽光発電オーナーと事業者のトラブル」と「太陽光発電オーナーと近隣住民のトラブル」に分けることができます。



太陽光発電オーナーと事業者のトラブル

雑草が生い茂るのを放置しておくと、パネルにあたる日照が遮られたり、昆虫や鳥類が集まってパネルに汚れが付着したりして、予定されていた発電量が確保できなくなることがあります。また、雑草が太陽光発電設備にからみついて、機器に障害を引き起こしてしまうこともあります。契約内容にもよりますが、こうしたトラブルで事業者にクレームが入った場合、と、事業者は対応をしなければならなくなります。その際、事業者がとる対策としては、「定期的な除草作業」のほか、「砂利の敷き詰め」や「コンクリート舗装」などがありますが、ここで新たなトラブルにならないよう注意が必要なものとして、「除草剤の散布」があります。



太陽光発電オーナーと近隣住民のトラブル

除草剤散布は1回あたりのコストを抑えることができますが、これが太陽光発電オーナーと近隣住民のトラブルにつながる場合があるのです。具体的には、除草剤の影響で近隣の農地の作物が枯れてしまうというようなものがあります。

太陽光発電オーナーのA氏は、雑草対策として散布した除草剤に関し、近隣の農家の方からクレームを受けました。A氏と農家の方はトラブル解決のための話合いの場を持ちましたが、その際、農家側が除草剤による子供への健康被害の可能性を指摘し、A氏は、今後除草剤を用いないで雑草対策をすることを約束しました。これを受けてA氏は、太陽光発電機器の管理を依頼していた太陽光発電事業者に、雑草対策において落ち度があったのではないかとクレームを入れ、今後は除草剤を使用しないで雑草対策するよう依頼しました。その結果、太陽光発電事業者は、人件費のかかる人の手による定期除草を実施することになったのです。


ABOUTこの記事をかいた人

慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。