第52回 住宅(不動産)にかかわる民法改正の概要(7)


回も前回に引き続き、売買契約に関わる改正の中心の一つとされている担保責任(契約不適合)の問題をみていきます。今回は、契約不適合に関して、これまでに触れていなかった論点を見ていきます。



契約不適合に基づく買主の権利の期間制限

改正前の民法では、物や権利の瑕疵に基づく売主の担保責任について、買主の権利行使を1年以内とする期間制限を定める規定が複数ありました。具体的には、次のような規定がなされていました。

①権利の一部が他人に属する場合および数量不足等の場合・・事実を知ったとき(買主が善意の場合)または契約時(買主が悪意の場合)から1年(改正前民法564条、565条)

②目的物に用益権等の権利が付着している場合・・事実を知った時から1年(同566条3項)

③目的物に隠れた瑕疵があった場合・・事実を知った時から1年(同570条、566条3項)
権利の全部が他人に属する場合など、上で挙げた以外の場合は、債権の消滅時効の規定に従うこととされていました。

これに対し、改正法では、物の種類・品質についての契約不適合については、消滅時効の一般原則と異なる規定を置くことが維持され、具体的には、不適合を知った時から1年以内に売主に通知することが買主の義務とされ、これを怠ると権利を失うこととされました(改正民法566条)。1年の期間制限を維持した点については、目的物の引き渡しによって履行が完了したとする売主の期待の保護の必要性や、物に関する契約不適合は、物の使用や経年劣化により比較的短期間で判断が困難になることが主な理由として挙げられています。

他方、数量に関する契約不適合や権利に関する契約不適合については、買主の権利に関する期間制限の定めはなく、消滅時効の規定に従って処理されることとなります(166条1項)。

なお、物の種類・品質についての契約不適合に関する566条による期間制限により、消滅時効の規定の適用が排除されるものではないとされています。すなわち、物の種類・品質についての契約不適合について、566条に従った通知が行われたことによって保存された買主の権利の存続期間は、消滅時効の規定(166条1項)に従うことになります。

(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

(債権等の消滅時効)
第166条
1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
2 (省略)



その他の規定の見直し

改正前民法の担保責任に関わる条項については、他に次のような改定が行われました。

(1)他人の権利の売買についての売主の解除権の削除
他人の権利の売買について、改正前民法で、善意の売主に認められていた解除権については、その合理性が乏しいとして、改正法では削除されました。

(参考 改正前562条)
1 売主が契約の時においてその売却した権利が自己に属さないことを知らなかった場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは、売主は、損害を賠償して、契約を解除することができる。

(2)競売における担保責任
改正前には強制競売のみが対象とされていましたが(改正前568条1項)、「競売一般」についての規定に改められ(568条1項)、適用範囲が拡張されました。ただし、具体的内容は、改正前の規定がほぼ維持されています。

(3)目的物に抵当権等がある場合の担保責任
改正前民法では、抵当権等の行使によって買主が所有権を失った場合に買主に解除権および損害賠償請求権を与える定めがありましたが(改正前567条)、所有権を失うことを要件とする必要はない等の考えから削除され、契約不適合の一般原則に従って取り扱うこととされました。



ポイント

物の種類・品質についての契約不適合に限定して、買主の権利の期間制限に関する特則が設けられ、不適合を知った時から1年以内に売主に通知することが買主の義務とされた。

数量不足や権利に関する契約不適合については、期間制限についての特則はなく、消滅時効の規定に従って処理される。



次回は、売買に関する法改正についての、その他の論点をみていく予定です。

ABOUTこの記事をかいた人

一橋大学経済学部卒。株式会社村田製作所企画部等で実務経験を積み、一橋大学法科大学院、東京丸の内法律事務所を経て、2015年にアクセス総合法律事務所を開所。 第二東京弁護士会所属。東京三弁護士会多摩支部子どもの権利に関する委員会副委員長、同高齢者・障害者の権利に関する委員会副委員長ほか

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