第27回 ペットとマンションに関するトラブル相談事例


        

近年流行りのペット可物件もマナーによってはトラブルが

        

最近はペットと暮らすための専用設計にて建てられる「ペット共生型物件」や通常賃貸の「ペット可」物件も増えています。ペット可物件は入居者ターゲットが明確であり一定数の入居者が見込めるとともに他物件との差別化が図れるため、賃貸経営のスタイルとして選択するオーナーも増えています。しかし、やはりペット可物件とはいえ、入居者のマナーによってはトラブルが発生する可能性もあります。今回は、ペットに関するトラブル事例を紹介します。

    

    

        

事例①:ペット可物件といえでも限度が…

        

A氏がオーナーを務めるマンションから犬を飼っていた入居者が退去した後、他の部屋と比べ、壁紙破れや床に傷など、かなり室内が損壊された状態でした。A氏が原状回復費用を請求したところ、元入居者は「ペット可物件なのだから、ペットが物件に傷をつけてしまうのは当たり前。『物件の通常使用の範囲内』だから原状回復費用を支払う必要はない」と言われてしまいました。ここで、A氏はあらためて「ペットがつける傷における通常の範囲」を確認したいと思い、公平公正な第三者同席の上、元入居者と話し合いの場を持ちたいと考えていました。

    

    

        

事例②:ペットの臭気がひどすぎて…

        

B氏は、隣の家で飼っているペットの臭気に悩まされていました。飼い方の影響もあるのか、臭気があまりにもひどいので、管理会社から厳重に注意してもらったところ、以前の所有者(売主)からもクレームが入っていたことが判明しました。しかし、マンション購入時には、売主から隣人の問題は聞いておらず、契約書にも、「臭気はなし」となっており、売主のサインもありました。B氏は、臭気の問題がわかっていたらこのマンションを購入することはなかったとして、付随的な説明義務違反に基づく責任追及も視野に動き出すことにしました。ただ、その前に、まずは売主と話合って情報共有の上、共通の認識を持ち、トラブル解決への道のりを描きたいと考えていました。

    

    

        

マンションでのトラブル解決に適しているADR

        

国土交通省が実施している「マンション総合調査」によりますと、ペットトラブルなどマンションで発生するトラブルは、話合いによって解決に至った事例がとても多く報告されています。やはり、マンションのように、トラブルがあったとしてもその後も住み続け、互いに顔を合わせなければならないケースが多い場合は、裁判で勝ち負けを決めて関係性にしこりを残すのではなく、ADRなどの話合いによって互いに理解し合い、和解を目指す手段が選ばれるのでしょう。

    

ABOUTこの記事をかいた人

慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手資格取得の専門予備校LEC<東京リーガルマインド>で講師として働きつつ、中央大学法科大学院を卒業。現在、(株)M&Kイノベイティブ・エデュケーション代表取締役のほか、(一社)日本不動産仲裁機構の専務理事兼ADRセンター長を務める。