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第22回 名誉毀損の救済方法(1)

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回からは、名誉毀損の救済方法を取扱います。初回の今回は、もっとも一般的な救済の手段である損害賠償請求の概要と有形損害を中心にみていきます。

概要

名誉が、民法の不法行為において保護される法益に当たることには争いがありません。民法710条が、「名誉を侵害した場合(中略)、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」と非財産的損害に対する賠償請求も可能な旨を定めていることからも、名誉毀損に対して不法行為に基づく損害賠償請求ができることが明らかです。

不法行為に基づく損害賠償請求においては、金銭による賠償が原則となります(民法722条1項、417条)。

名誉毀損における損害

本コラムの第1回で説明したとおり、名誉毀損の対象となる名誉は外部的名誉であり、社会的評価を低下させる行為が名誉毀損に当たることから、名誉毀損における損害とは、社会的評価の低下による損害ということができます。

そこで、この具体的内容が問題となりますが、判例は、「民法710条(中略)の文面は判示のようにいわゆる慰藉料を支払うことによつて、和らげられる精神上の苦痛だけを意味するものとは受けとり得ず、むしろすべての無形の損害を意味するものと読みとるべき」(最判昭39・1・28民集18-1-136)と述べて無形の損害を認めたうえで、「数理的に算定できるものが、有形の損害すなわち財産上の損害であり、その然らざるものが無形の損害である」(同)と説明しています。

さらに、「無形の損害と雖も法律の上では金銭評価の途が全くとざされているわけのものではない。侵害行為の程度、加害者、被害者の年令資産その社会的環境等各般の情況を斟酌して右金銭の評価は可能である。その顕著な事例は判示にいうところの精神上の苦痛を和らげるであろうところの慰藉料支払の場合である。しかし、無形の損害に対する賠償はその場合以外にないものと考うべきではない。(中略)被害者が自然人であろうと、いわゆる無形の損害が精神上の苦痛であろうと、何んであろうとかかわりないわけであり、判示のような法人の名誉権に対する侵害の場合たると否とを問うところではない」(同)として、無形の損害が精神的損害に限られないことや、法人の損害も認めています。

上で挙げた判例の考え方によれば、名誉毀損における損害は、
① 有形損害(数理的に算定できる財産的損害)
② 無形損害(非財産的損害)
に分類されることになります。

このうち②の無形損害は、自然人のみの認められる(ア)精神的損害と、自然人と法人いずれにも認められる(イ)それ以外の無形損害に分類されることになります。

有形損害(財産的損害)

前項で名誉毀損の損害の分類について説明しましたが、実際の紛争では、有形損害の立証が容易でないことも多く、無形損害、特に精神的損害に基づく慰謝料が請求されることが多いと思われます。しかし、最近ではインターネット上の名誉毀損の事例が増えており、発信者に関する調査費用等が有形損害として認められるケースも見られますので、ここで簡単に見ておきます。なお、慰謝料等の無形損害に関わる問題は、後に詳しく取り扱う予定です。

数理的に算定できる有形損害は、名誉毀損行為を受けたことにより費用の支出が必要になったような場合の損害(積極損害)と、売上が減少したような場合の損害(消極損害)が想定されます。有形損害が認められたケースとしては、以下のような事例があります。

(1)インターネット上の名誉毀損について、発信者を特定するための調査費用が有形損害として認定された事例(東京地判平24・1・31判時2154-80)

裁判所は、原告が、電子掲示板の管理者である海外法人に対してIPアドレス開示の仮処分の申立てを行い、その結果を踏まえてさらに携帯電話会社への発信者情報開示請求を行った経緯を踏まえ、「本件訴訟が『2ちゃんねる』の違法な書き込みについての犯人の特定のため、上記のとおり、原告が弁護士を介して、漸く被告Yに辿り着いた経緯に照らすと、被告Yの特定のための調査費用63万円も被告Yに対する不法行為の損害として被告Yが負担すべき」として、慰謝料に加えて調査費用も損害として認定しました。

(2)幼稚園の園児に対する虐待について報じた週刊誌の記事による名誉毀損について、詳細に有形損害が認定された事例(東京地判平26・9・26判時2244-55)

裁判所は、記事による名誉毀損を認めたうえで、「本件入園辞退者に対する返還金相当額45万8000円、平成26年度の定員割れに係る入園金相当額200万円及び警備委託費用相当額106万1550円の合計351万9550円の損害が生じている」として、消極損害(定員割れに係る入園金相当額)も含めた有形損害を認定しました。

ポイント

名誉毀損に対しては不法行為に基づく損害賠償請求が可能であり、金銭による賠償が原則とされる。

名誉毀損における損害は有形損害と無形損害に分類され、そのうち無形損害は、自然人のみに認められる精神的損害と法人にも認められるそれ以外の損害に分類される。

有形損害(財産的損害)は、数理的に算定できる損害をいい、近時では、インターネット上の名誉毀損において弁護士による調査費用を有形損害として認めた事例もある。

次回も引き続き名誉毀損による損害賠償請求に関わる問題を取り扱う予定です。

原田真 このコラムの執筆者
原田真(ハラダマコト)
一橋大学経済学部卒。株式会社村田製作所企画部等で実務経験を積み、一橋大学法科大学院、東京丸の内法律事務所を経て、2015年にアクセス総合法律事務所を開所。
第二東京弁護士会所属。東京三弁護士会多摩支部子どもの権利に関する委員会副委員長、同高齢者・障害者の権利に関する委員会副委員長ほか

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